意外と知らない"日本の教科書制度"(vol.2)

日本の教科書制度とは何か? その目的や流れ、仕組み等を詳しく解説する第二弾。今回は、学校や授業における教科書の役割と、教科書制度との関係についてです。

教科書の使われ方も国によって様々

前回の記事でご紹介したように、国によって教科書制度は大きく異なります。これは、それぞれの国で学校教育の在り方や、授業の進め方、その中での教科書の担う役割が違うことに関係しているものと思われます。

ご存知の通り、日本の小中学校における授業では、「学校教育法」により教科書の使用が義務付けられており、実際にほとんどの授業は教科書に沿って行われています。総合学習等一部を除けば、教科書のない授業は考えられません。

(財)教科書研究センターの「義務教育教科書に関する教師の意識及び保護者の要望についての調査(2008年)」によれば、
「あなたのふだんの授業での教科書の使い方にもっとも近いのはどれですか」
という教師への質問に対し
「1.教科書だけを使ってその内容を逐一取り扱う」
または
「2.教科書を主に使うがその他の教材もところどころ使う」
と回答した教師は合わせて、国語では小学校 96.2%、中学校 97.2%、社会では小学校 70.4%、中学校 68.4%、算数・数学では小学校 94.0%、中学校 79.6%、理科では小学校 83.8%、中学校 77.0%、中学校英語では 90.8%を占めました。圧倒的に教科書主体の授業が行われていることがわかります(他の選択肢は「3.教科書とその他の教材を半々程度使う」、「4.教 科書をところどころ使うがその他の教材を主に使う」、「5.教科書はほとんど使わずに、その他の教材を使う」)。

日本では副教材に検定制度はありませんが、お隣の韓国の小学校では日本でいう副教材(「補助教科書」という)についても、国定のもの以外の使用を禁止しているそうです。

教科書に依存せずに授業をつくるフランス

対照的なのが、「出版社の教科書発行の自由」、「学校の教科書選択の自由」、「教師の教科書使用の自由」が認められていて、教科書への依存度が日本や韓国に比べると極端に低いフランスです。

国民教育省の調査報告書(1998年)によれば、小学校では、「教科書は4分の3の授業で机の上に置かれているが、絶えず用いられているのは4分の 1の授業のみ。3分の2の授業で教科書等のコピーが児童に配布され、教科書と組み合わせて使われる。5分の1を超える授業ではコピーのみを教材として使用 していた」とのことです。

小学校では、家庭の事情により宿題をできない児童もいて不平等であることなどから筆記による宿題が法律で禁止されており、教科書の演習問題を宿題に 出すことはできないため、教科書は教室に据え置きで2人に1冊という学校もあり、コピーで復習することが多いという事情もあるようです。

また、中学校の数学では、「授業を通して教科書を使用する教員は12.5%にとどまり、3分の1の授業で副次的に用いられるのみ」と報告されてお り、フランスの教科書は、日本でいう副教材的な位置づけにあると言えそうです。ですから、フランスの教師にとって、授業ごとに複数の教科書を参照し、自ら の指導方法に適した、且つクラスの実態に適した内容のものを選ぶというのは、ごく当たり前のことなのでしょう。

教科書に縛られず、教師の力量次第で独創的な授業が展開しやすい環境は、個性を重んじるお国柄でしょうか? その分、良い意味でも悪い意味でも、学 校や教師によって授業内容や質がガラッと変わってしまう可能性があります。このため保護者はより厳しい目で学校選びをしなければならないようです。

一方で、ほとんどの授業が教科書に沿って行われる日本では、国内どこに行っても検定教科書によって保障された均質な教育を受けられるという安心感が あります。また、教材制作会社は教科書に準拠した教材を作れば、一定の市場を確保できますし、教科書採択のシェアを見れば市場規模の予測もつきます。教科 書が検定を通ってから、学校で使用されるまでの間に、十分な時間とコストをかけて良質な参考書やドリル教材、資料集、その他の教育器具などを作って教育現 場に提供することができるわけです。

読者の皆さんは日本式とフランス式、どちらに魅力を感じますか?

≪第3回へ続く≫

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 江本真理子

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