意外と知らない"21世紀型スキル"(vol.3)

"21世紀型スキル"とはどのような能力か? そして、どのように育成し、評価するものかについて、4回にわたり詳しく紹介するシリーズの第3回目です。

前回の第2回目は、「21世紀型スキル」や「生きる力」など、新しい時代に必要とされる様々な教育の概念をご紹介しました。今回は「21世紀型スキル」の一つのコアとも言える「問題解決能力」育成の取り組みをいくつか紹介してみたいと思います。

問題解決のプロセス

問題解決には、問題を見つけるところから解決するまでいくつものプロセスがあります。次に二つ例を挙げます。

一つ目の例は、「蛍光灯が点灯しない」のような問題が明確になっている場合をイメージしています。この場合のプロセスは以下の通りです。

  1. 問題の認識
  2. 原因調査と分析
  3. 解決策の立案
  4. 解決策の実施
  5. 結果の評価

二つ目の例は、問題が明確になっていない場合をイメージしています。こちらは、会社や国家の問題を考える場合にも応用可能なプロセスです。

  1. 本質的問題発見
    (1)情報を集める
    (2)集めた情報を分析する
    (3)分析結果を論理立てて整理・統合し、まとめ、本質的問題を発見する
  2. 解決策の立案
    (4)解決策のアイデアを出す
    (5)解決策の仮説を作る
    (6)仮説を検証する
  3. 解決策の実行
    (7)結果と論理を明確にする
    (8)キーパーソンを説得する
    (9)実行しながら、必要に応じて修正する

このように、解決すべき問題の種類や性格に相応しいプロセスを理解した上で、各ステップで必要になる能力を身に付けて、初めて効率的な問題解決ができます。文部科学省は、問題解決に必要な能力を「思考力・判断力・表現力等」とし、これを育むための学習活動として、次のような例を挙げており、各地で様々な取り組みが行われています。

  1. 体験から感じ取ったことを表現する
  2. 事実を正確に理解し伝達する
  3. 概念・法則・意図などを解釈し、説明したり活用したりする
  4. 情報を分析・評価し、論述する
  5. 課題について、構想を立て実践し、評価・改善する
  6. 互いの考えを伝え合い、自らの考えや集団の考えを発展させる

思考力育成の取り組み

現状から問題を発見したり、その原因を調べたり、その解決策を考える際に、情報を集めて分析・整理するには、論理的思考力が不可欠です。

関西大学初等部では、ミューズ学習という取り組みを行っています。各教科の授業の中で、次の能力とシンキングツールRを対応させて、1年生からどんどん使うようにし、6年生までにどれも使いこなせるように指導しているそうです。

シンキングツールRとは、考えを進める手順やそれをイメージさせる図で、いろいろな方法で「考えること」を助けてくれます。それぞれの図の詳細な使い方はこちら(PDFファイル)をご覧ください。

シンキングツールRの一例

比較する:ベン図、分類する:Xチャート、多面的に見る:フィッシュボーン図、関連付ける:イメージマップ・コンセプトマップ、構造化する:ピラミッドチャート、評価する:PMI分析表

問題解決のための科学的方法の学習の取り組み

アメリカのある公立小学校では、3年生・4年生・5年生の年度終わりに、保護者の協力を得て「サイエンスプロジェクト」を行い、リポートと展示ボードの提出を行うそうです(リポートと展示ボードは学校公開の日に展示されます)。実験の目的である現象そのものではなく、「問題解決のための科学的な方法」、つまり目的に対して自分で実験を計画して観察し、得られたデータから導かれることをまとめて結果を提示する、という方法とその姿勢を学習するものとして位置付けられており、特別授業で次のようなプリントが配布され、児童は説明を受け、家庭で実践します。

ある家庭では「リンゴはどこに置いておくと早く腐るか」を調べるためにいろんな場所に1個ずつリンゴを置いて観察したのですが、リンゴに個体差があったために妥当な結論を導くことができず、実験後に親子で考え「各場所に複数個のリンゴを置くべきだった」と理解したことが収穫だったそうです。小学生には難しい内容ですが、その効果に関わる変数以外は同じ条件にして実験する必要があることなどを体験から実感し、当然のこととして理解しておくことは、大変意義があるのではないでしょうか。

「サイエンスプロジェクト」で配布されるプリントの一部

リポートに含める内容

  1. プロジェクトの名前
  2. 答えようとしている問い
    ≪例≫「どの電池が最も長く持つか」「かたつむりは1分間でどれだけ動くか」
  3. 実験を行うために、そして仮説が正しいこと、あるいは間違っていることを証明するために必要な材料や器具の一覧
  4. 実験の手順
  5. 日々の観測値と観察。実験を繰り返す場合には、各実験の最中と実験後の結果を記載すること
  6. 結論。最初の文章は、なぜこの実験をしたのか、2番目の 文章は最初に立てた仮説、3番目の文章は仮説が正しかったか間違っていたかを実験の結果に基づいて書くこと。第2段落では、結果を説明する。得られた結果 はなぜそのようになったと思うか。実験結果に影響を与えたかもしれない間違いや異常も記述すること
気をつけること
  1. 説明変数となりうるものを特定する
  2. 仮説を選び、提示する
  3. 変数に対して何を計測するかを設定する
  4. 使う方法や材料を含めて実験のデザインをする
  5. うまくコントロールしながら研究を進める
  6. データをラベル付きの表にまとめる
  7. 実験結果からグラフを描く
  8. データから結論を導く
  9. 初めに立てた仮説と結論を比較する

21.5世紀探究型学習の取り組み

玉川学園の中学3年生は「学びの技」blank という必修科目で、1年かけて論文作成とポスターセッションに取り組むそうです。IB(国際バカロレア)のカリキュラムや評価方法を取り入れ、様々なスキル習得を通して論理的思考力や批判的思考力、創造力を育成しています。

探求型学習は以前からよく行われていますが、「生涯学び続けるためのラーニングスキル」習得にはふりかえりが重要です。「インタビューの質問項目を自分で作ることができる」「自分の伝えたいことに合わせて、写真の撮り方を工夫している」「目次と索引の使い方が分かる」「オンラインデータベース(新聞記事等)の検索ができる」などの各学習スキルの習得状況や論文について、生徒が自己評価も行いますが、教員の評価と概ね一致するそうです。客観的に自己評価することで、さらにステップアップしていくことができます。

論文の構成(※問いはYes/Noで答えられるものにしている)

問い、基本知識、根拠1、根拠2、結論

論文評価項目の例:問いの適正

達成度
詳細
5
興味・関心と結びついた適切な問いが、基礎知識や問題の背景としっかりと関連付けられていて、論文の中で十分に示されている
3-4
適切な問いが、基礎知識や問題の背景とある程度関連付けられていて、論文の中に示されている
1-2
適切な問いでなく、基礎知識や問題の背景との関連付も不十分である
0
レベル1に達していない

3回目のまとめ

問題解決能力の育成はICTを使わなくてももちろんできますが、ICTを使うことで、自分の考えをより速く・簡単に皆に伝えることができたり、必要な情報をより速く・簡単に入手したりすることができるので、限られた授業時間の中でこれらの取り組みをより効果的に実現するために、ICTの導入を決める自治体が増えてきているのではないでしょうか。ICTを活用した情報収集能力を磨くことは、インターネット上にある大量の信頼性も定かでない情報に埋もれてかえって問題解決ができない状況の回避にもつながります。

≪第4回へ続く≫

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 江本真理子

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