意外と知らない"小中一貫教育"(vol.1)

本サイトでも何度か取り上げていますが、昨今、"小中一貫教育"という言葉を耳にします。文字だけ見ても、小学校と中学校を一貫した教育であることはわかりますが、具体的にどういうことなのか、何のために小学校と中学校を一貫させるのか、まだまだ疑問に感じる方もいらっしゃると思います。そこで、今回から3回にわたり小中一貫教育の目的や様々な取り組みについて紹介したいと思います。

小中一貫教育とは

ご存知の通り、日本の義務教育期間は小学校6年間、中学校3年間の計9年間です。小中一貫教育とは、小・中学校が目指す子ども像を共有し、この9年間を通じた教育課程を編成し、系統的な教育を目指す教育のことを言います。目指す子ども像を共有することで、義務教育期間9年間の連続性をより高めることができます。

小中一貫教育と似た言葉として“中高一貫教育”がありますが、これらは全く異なります。小中一貫教育が、より一貫性を高めることを目的にしているのに対し、中高一貫教育では、子ども達に多様な選択肢を与える教育を目指しています。それぞれ「一貫」とした狙いが異なるのです(中高一貫教育については、関連記事「公立中高一貫見直しへ 」で述べています)。

小中一貫教育には、現状、大きく以下の2パターンの制度化が検討されています。
●小中一貫教育学校(仮称)
小中一貫教育の基本形であり、一人の校長の下で一つの教職員集団が一貫した教育課程を編成・実施する単一の学校。
●小中一貫型小学校・中学校(仮称)
多様な取り組みの実態を踏まえ、組織上独立した小学校及び中学校が「小中一貫教育学校(仮称)」に準じた形で一貫した教育を施す形態。

小中一貫教育を推進する理由

小中一貫教育を実施する理由として、様々なことが挙げられています。ここでは、大きく三つの理由について紹介したいと思います。

(1) 教育内容・学習活動への対応
変化の激しい現代社会において、子ども達は知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等を求められています。これらのバランスを重視し、教育内容は量・質ともに充実したものにならなければなりません。特に、グローバルな時代である現代において、外国語によるコミュニケーション能力の育成や理数教育の国際的な通用性が求められています。これらの教育では、専門的な指導が求められるため、小・中学校の教員の連携が重要になってきます。また、9年間という長期的な視点を持ち、子ども達のつまずきやすい学習内容についてのきめ細やかな指導を行うなど、学習指導の工夫に取り組むことも可能になります。

(2) 子ども達の発達の早期化への対応
小中一貫教育では、6-3制とは異なる学年段階での区切りを設けている場合があります。これは、子ども達の発達の早期化という視点からも必要という指摘があります。
6-3制が導入されたのは昭和20年代前半ですが、その頃と比べ現代では、子ども達の身体的成長(身長や体重)の伸びが大きい時期が2年程度早まっている、という調査結果があります。また、心の成長においても、「自分が周りの人(家族や友達)から認められていると思いますか」という自尊感情に関わる質問に対し、小学校高学年から急に否定的な回答が多くなるといった調査結果もあります。もちろん子ども達の成長は個人差も大きいですが、思春期の到来時期が早まっている可能性も考えられるため、子ども達の様々な成長の段差に適切に対応するという観点から、“4-3-2”や“5-4”といった区切りでの対応が考えられています。

(3) 「中1ギャップ」への対応
小学校から中学校への進学において、新しい環境での学習や生活へ移行する段階で、いじめの認知件数、不登校児童生徒数、暴力行為の加害児童生徒数等が急激に増加したりする、いわゆる中1ギャップが指摘されています。
中学校では、小学校と異なり「教科担任制であること」、「指導スピードが速いこと」、「部活動があること」等、子ども達の学習・生活環境が劇的に変化します。適度な段差によって教育効果が大きくなることも考えられますが、差異が過度な場合、中1ギャップの背景となり得ることもあります。そのため、小中の一貫性を高めることで、子ども達が体験する段差に配慮し、小・中学校の接続を円滑にする対応が考えられます。

これら三つの理由をはじめ、いくつかの理由が挙げられています。次回は、小中一貫教育の取り組みについて紹介したいと思います。

≪第2回へ続く≫

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 眞鍋悠介

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