意外と知らない"小中一貫教育"(vol.2)

意外と知らない

小中一貫教育について、その目的や取り組み等を紹介する第2弾。前回は、小中一貫教育における、目的について紹介しました。今回は、小中一貫教育の取り組みについて紹介したいと思います。

小中一貫教育の取り組み(1):一貫したカリキュラムの策定

前回にも紹介した通り、小中一貫教育では、小学校と中学校の9年間において、その一貫性を高めることが大切です。重要なのは、小学校と中学校をつなぐ、ピンポイントなタイミングではなく、9年間を如何に1本の柱として機能させるか、ということです。そのためにも、一貫したカリキュラムを策定することが必要となってきます。

小中一貫教育において、“4-3-2”や“5-4”など、様々な区切りがある中、6-3制を除いて最も多いのは、“4-3-2”の区切りです(文部科学省「小中一貫教育関連基礎資料」(PDF)pdfより)。9年間という長期的な視点を前提とし、様々な自治体がこの“4-3-2”の各段階において、前期4年間で基礎的な力を定着させ、中期3年間で活用し、後期2年間で発展させる、などのような一貫性を持った教育目標を掲げています。

また、小中一貫教育を推進している地域の中には、9年間の発達段階に応じた学習・生活の到達基準を策定し、教員をはじめ、子ども達や保護者への浸透を図っている自治体(埼玉県八潮市など)もあります。

小中一貫教育の取り組み(2):学力の向上、人生観・人間性の育成

小中一貫教育を推進する理由の一つとして、第1回にも記載しましたが、「教育内容・学習活動への対応」があります。特に英語教育に関しては、グローバルな社会において、子ども達にとって欠かせないコミュニケーション能力の一つとなります。この英語教育を小学校の早い段階から実施し、英語に親しむことが大切です。そのほか、学習の取り組みとして、子ども達の学力に応じた学習に取り組めるよう、各成長段階での学力別問題集を自治体独自で作成したり、子ども達の学力や興味に応じて好きな科目を選択できる「えらべる科」という学科を設けている自治体(埼玉県八潮市)もあります。

一方で、小・中学校では、人生観や人間性の育成も重要な要素の一つになっています。これらの育成に関して、「道徳」「特別活動」「総合的な学習の時間」の本来のねらいや内容を関連づけ、“人間形成”を目的に単元として再構成した「市民科」という学科を設けている自治体(東京都品川区)もあります。市民科は、これからの社会で生きていく中で役立つ、正しい認知と具体的な行動を身につけさせる特別教科です。このように、自分の育った地域を知り、育った地域に自信を持つことで、自分自身にも自信を持つことができる等、人生観の育成にもつながる学科を設けることも取り組みの一つです。

小中一貫教育の取り組み(3):部会・分科会の設立

小中一貫教育の取り組みとして、部会や分科会の設立が考えられます。小中一貫教育では、地域の小学校と中学校が一体になって取り組む必要があります。部会や分科会を設立することで、地域内の関係者にそれぞれ役割が与えられ、各々が一丸となって小中一貫教育に取り組めます。

この部会・分科会を設立する上で、重要と思われる点は、大きく2つあります。

一つ目は、その地域にどんな人材がいるのか、ということです。地域内の人物をしっかりと把握することで、どのような人員でどのような部会・分科会を設立するのかを検討する必要があります。地域内の人材を最大限に生かした、適材適所の部会・分科会を設立することで、地域がより一体となり推進することができます。この中で、学校長は司令塔として、方針の策定や職員のモチベーションを高める役割を担います。なお、小中一貫教育推進主任を設け、この推進主任を中心に小中一貫教育を進める自治体(栃木県宇都宮市など)もあります。ただし、推進主任の業務負担は大きくなってしまうため、注意は必要です。

二つ目は、子ども達の“心”に関する部会・分科会を設立することです。小中一貫教育を推進する理由の1つとして、「中1ギャップ」が挙げられます。学力、生活等のほか、子ども達の心に対しても、小中一貫となって配慮できるよう、専門の部会・分科会を設立し、責任をもって取り組むことが大事です。

小中一貫教育の取り組み(4):小・中学校の相互理解

小中一貫教育で重要な点の一つに、小学校と中学校の相互理解が挙げられます。小学校と中学校では、文化がやや異なる場合があるため、互いにしっかり交流し、理解を深めることが大切です。

小中一貫教育では、小学校と中学校の施設が一体となった一体型と、小学校と中学校の施設が隣接している隣接型、異なる敷地にある分離型があります。一体型の方が小・中学校の相互理解を深めやすいですが、施設が離れた分離型でも工夫を行うことで、交流を図り、理解を深めることが可能です。

例えば、小・中学校の教員が合同で研修を実施することで、教員同士のコミュニケーションが生まれ、教員同士の理解が深まります。さらに小・中学校の教員が互いの学校で指導する相互乗り入れを行うことで、中学校でつまずきやすいポイントについて予め小学生に指導したり、中学生に復習として小学校の学習を指導したりすることも可能になります。

また、小学校教員が中学校に訪問する、という取り組みを行っている自治体(埼玉県八潮市、栃木県宇都宮市など)もあります。小学校教員が、中学校での子ども達の様子を見ることで、変化に早く気づくことができ、元気のない子ども達への対策も可能となります。

次回は、小中一貫教育の評価と課題について紹介します。

≪第3回へ続く≫

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 眞鍋悠介

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