意外と知らない"小中一貫教育(vol.3)

意外と知らない

小中一貫教育について、その目的や取り組み等を3回にわたり詳しく紹介する第3弾。最終回である今回は、小中一貫教育の評価と課題について紹介したいと思います。

小中一貫教育の評価

実際に小中一貫教育に取り組む上で、その評価を行うことも重要です。取り組んだ結果、どのようなことが改善されているのか、取り組み内容は適切であったか、次の1年へつなげるためにも、しっかりと評価をする必要があります。これらを評価するにあたり、考えられるいくつかの項目を以下に紹介します。

●学力に関して
「学習意欲」、「学力」
●中1ギャップに関して
「いじめの認知件数」、「不登校児童生徒数」、「暴力行為の加害児童生徒数」、「児童生徒の自尊感情」(自分には良い所があるか、周りの人は自分を認めていると思うか等)
●その他
「生活習慣アンケート」、「保護者アンケート」、「体力測定」

上記のような評価を行い、小中一貫教育の取り組みをより効果的に改善していくことで、継続した取り組みにつながっていきます。

小中一貫教育では、子ども達の成長が大前提にあるのですが、小中一貫教育を進める上で、教員の成長も大切な要因の一つとなっています。上記評価項目以外にも、教員の授業や指導内容に関する成長結果がわかる評価項目も、今後検討していく必要があります。

なお、小中一貫教育の取り組みにおいて、見えつつある成果は下記の表の通りです。

小中一貫教育の取り組みにおける成果
 
成果
学習指導上の
成果
  • 各種学力調査の結果の向上
  • 学習意欲の向上、学習習慣の定着
  • 授業の理解度の向上、学習に悩みを抱える児童生徒の減少 など
生徒指導上の
成果
  • 「中1ギャップ」の緩和
  • 学習規律・生活規律の定着、生活リズムの改善
  • 自己肯定感の向上、思いやりや助け合いの気持ちの育成
  • コミュニケーション能力の向上 など
教職員に与えた効果
  • 指導方法への改善意欲の向上、教科指導力・生徒指導力の向上
  • 小・中学校間における授業観や評価観の差の縮小
  • 小学校における基礎学力保障の必要性に対する意識の高まり
  • 小・中学校で共通に実践する取組の増加や小・中学校が協力して指導に当たる意識の高まり
  • 仕事に対する満足度の高まり など
その他
  • 保護者との協働関係の強化、地域との協働関係の強化
  • 学校運営、校務分掌の効率化 など

小中一貫教育における課題

最後に、小中一貫教育における課題について、いくつか言及したいと思います。

(1) 子ども達に関する課題
小中一貫教育を実施することにより、子ども達に対するいくつかの課題も指摘されています。たとえば、9年間の一貫教育の中で、子ども達の人間関係が固定化してしまうことによる悪影響の懸念や、通常の小・中学校から小中一貫教育を実施している学校へと転校する場合やその逆の場合に、学習内容の欠落や、適応に困難が生じる可能性があるという懸念等です。

これらの懸念に対しては、多様な形態での異学年交流の大幅な増加や、転出入時に子どもや保護者に対し、丁寧なガイダンスや未習内容のフォローを行うなど、工夫をしていく必要があります。

(2) 教職員に関する課題
小・中学校の連携を強めるためには、小・中学校の教職員が互いに話し合い、共通認識を深める必要があります。そのため、小・中学校間の打合せや、小・中学校合同の研修を行うことが有効と考えられますが、これらの時間を確保することが難しい、という指摘があります。日々の業務に追われる中、小中一貫教育を導入することで、特に導入初期段階を中心に、業務量の増加につながる可能性があり、教職員が負担に感じたり、多忙に感じたりすることが課題と指摘されています。

これらに関しては、教職員が感じる負担をできる限り軽減させるため、校務支援システムの導入や、TV会議システムを活用した打合せを行うなど、負担軽減のための支援を検討する必要があります。

(3) 制度に関する課題
小中一貫教育学校(仮称)は、小学校と中学校を一貫した教育を行う学校です。そこに配置される教員は、9年間の課程を見通した上で、質の高い教育を行うことができる力を持っている必要があります。そのため、配置される教員は、小学校及び中学校教員免許状の併有を原則とすることが適当です。しかし、現状では免許の併有率は地域によってばらつきがみられるた め、現実的には難しい状況です。

この状況の中で、小中一貫教育を推進するため、しばらくはどちらか一方の免許のみでも対応できる経過措置が必要と考えられています。今後、小中一貫教育における教員免許制度がどのようになっていくか、注目されています。

このように、小中一貫教育には、課題もありますが、日本の義務教育の在り方について、再考する良いきっかけになっているのではないでしょうか。皆さんは、小学校と中学校が一貫することで、子ども達に対してできることは何だと思いますか?

≪おわり≫

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 眞鍋悠介

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