意外と知らない"スクールカウンセラー"(vol.1)

意外と知らない

皆さんは子どもの頃、誰に悩み事を相談していましたか。ご家族やご友人、先輩などでしょうか。その悩み事が、学校における問題であったときはどうでしょう。担任の先生以外に、悩みを打ち明けられる身近な大人はいましたか。一昔前の日本では、教員が学校における児童生徒や保護者の相談役をほぼ一手に引き受けていました。現在はどうでしょうか。学校関係者や保護者の皆さんならよくご存知かと思いますが、今は多くの小中学校に、保健室とは別に「相談室」や「カウンセリングルーム」等が設けられています。この部屋で児童生徒や保護者の相談に乗るのは主に「スクールカウンセラー」と呼ばれる人々です。ではスクールカウンセラーとはどういう人で、国としてどのような取り組みがなされてきたのでしょうか。以降3回にわたって紹介します。

スクールカウンセラーとは?

スクールカウンセラーとは一言でいうと、「学校現場で、臨床心理の知見に基づき、児童生徒に向き合い教員と共にサポートする専門スタッフ」です。

平成7年度より国による公立校への導入がスタートしました。平成27年現在、公立小学校の65%に当たる1万3800校、中学校全校約1万校、併せて約2万3800校に配置されています。

多くの教育委員会ではスクールカウンセラーの資格要件として、以下の三つの要件のいずれかを満たす者としています。臨床心理における専門性が重視されることがおわかりいただけるかと思います。

  • 臨床心理士資格認定協会の認定に係る臨床心理士
  • 精神科医
  • 児童生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識及び経験を有し、学校教育法第1条に規定する大学の学長、副学長、学部長、教授、准教授、講師(常時勤務をする者に限る)又は助教の職にある者又はあった者

専門家が、学校内で教員とは異なる立場・人間関係から児童生徒や保護者に関わり、教員と連携して問題に取り組むことで、様々な問題の心理的な要因に対するケアを手厚くすることがこの事業の狙いでしょう。

スクールカウンセラーの人数や、担当校への出勤頻度などは自治体により様々ですが、週に8時間程度の自治体が多く、1年契約の非常勤職員です。このような勤務形態は導入当初の文部省(当時)事業で「年間280時間」と規定されて以来のものですが、現場からは勤務時間増の要望が根強くあり、いじめ対策等総合推進事業の一つとして、平成26年度からは生徒指導上、大きな課題を抱える公立中学校等200校で週5日相談体制を整備するための国家予算が計上されています。また、常勤に関連する動きとして心理職の国家資格化も検討されています。

うちの学校のスクールカウンセラーは何をしているの?

では具体的に、スクールカウンセラーはどのような業務を行っているのでしょうか。あるスクールカウンセラーの1日の業務の流れを見てみましょう。(表1参照)

表1:あるスクールカウンセラーの一日の勤務例(中学校)
8:15~
職員朝会参加、相談室に暖房を入れる
管理職や学年主任、養護教諭等と情報共有
9:00
保護者(主訴:登校渋り)から電話相談
9:45~10:35
2校時授業観察(1年○組)
11:00~
保護者面談(主訴:子育て、生活習慣)
11:40~14:00
不登校傾向の生徒(中3)が相談室に登校・談話、編み物、学習(漢字、英語の問題集等)、給食
昼休み
中1生徒(主訴:対人関係他)へ個別SST※(学習支援室にて)
13:30~
保護者面談(主訴:発達障害傾向)
15:00
記録整理、登校渋りの生徒へ手紙
16:00
校内委員会出席
18:00過
退勤

(※SST:ソーシャル・スキルズ・トレーニング。対人関係技能や問題解決技能など社会適応に求められるさまざまなスキルを段階的・系統的に身に着けていくプログラム)

「カウンセラー」というと、相談室にいて、一日中カウンセリングをしているようなイメージがあるかもしれませんが、実はそれ以外にも児童生徒の普段の様子を知るためにクラス活動に参加したり、相談室登校の児童生徒を受け入れたりと様々な活動があることがわかります。

業務全体を大きく分けると次のように分類できます。

児童生徒・保護者・教職員の問題解決をサポートする業務

[面接相談]
相談室等にて児童生徒や保護者、教職員と対面式で相談に乗る業務。
[教職員への助言]
臨床心理学における専門的立場から問題について教職員への意見表明を行う業務。必要に応じて外部専門機関との連携窓口も担う。
[相談者への査定(アセスメント)・検査]
人格検査や発達検査などの心理検査を行う業務。
[学校危機対応における心のケア]
災害・事故・事件等発生時に学校全体の心理面の回復に係る業務。

問題が大きくなるのを未然に防ぐための業務

[ストレスチェックなどの調査]
アンケート等の実施により問題行動に対する意識や、児童生徒のストレス状況を把握する業務。
[児童・生徒への「心の授業」参画]
自己や他者への理解を促す、いじめ問題について考える、コミュニケーション・スキルについて学ぶ等の「心の授業」について、計画や実施に係る業務。
[教員や保護者への研修や講話]
地域や学校の要望を踏まえた情報伝達型、ワーク形式等の研修・講話を行う業務。

特に最近では、スクールカウンセラーがカウンセリングの申し込みを待つような存在ではなく、自ら専門性を発揮してよりよい学校づくりに貢献する能動的存在であることが期待されており、後者のような予防活動への注目が高まっています。

スクールカウンセラーがその役割を果たすためには、まずその存在を広く知ってもらい、安心して相談してもらえるようになることが大切です。児童生徒にとり親しみ深い存在になることに加えて、家庭向けの相談室便りを発行する、学校HPに相談室コーナーを設けるなど保護者への働きかけも行われています。また教職員との情報共有も欠かせません。多くのカウンセラーは登校日には職員会議に出席し、学校の状況を把握する他、気になる生徒の様子等を担任教員と話し合うなど、積極的にコミュニケーションを図っているようです。

次回は、日本におけるスクールカウンセラーに関するこれまでの取り組みと、配置状況の広がりについてご紹介します。

≪第2回へ続く≫

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 足立智子・井上暁代

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