意外と知らない"スクールカウンセラー"(vol.3)

意外と知らない

第1回、第2回では、スクールカウンセラーの働きや配置数、国の取り組みの流れについてご紹介しました。最終回は、平成27年7月に中間まとめが発表された「チーム学校」を中心に、スクールカウンセラーを含めた学校全体の教育相談体制の今後について見ていきます。

「チーム学校」

第2回で述べたように、教員は、幅広い業務内容と複雑化・困難化する課題により、国際的に見ても勤務時間が長く、負担感が高い状況にあります。また、アメリカ、イギリスと比較して日本の教員以外の専門スタッフの割合は半数以下という結果も出ています。

そこで、教員に加えて多様な専門性を持つスタッフを学校に配置し、連携・分担してチームとして職務を行う体制を整備することで、学校の教育力・組織力を向上させようという「チーム学校」の検討が進められています。(図1参照)

図1:「チームとしての学校」像
文部科学省「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」(PDFファイル)より転載

文部科学省「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」(PDFファイル)より転載

チーム学校を実現させるための方策として以下の三つが挙げられています。

(1) 専門性に基づくチーム体制の構築

  • スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー(心理的・福祉的な専門スタッフ)
    ――法令に位置づけ、将来的に教職員定数として国庫負担の対象とすることを検討
  • 部活動支援員(仮称)(教員以外に、部活動の指導、顧問、単独での引率ができる支援員)
    ――法令に位置づけ、任用する際の必要な研修について検討
  • 地域連携担当教職員(仮称)(地域との連携の推進を担当する教職員)
    ――法令上明確化
  • アクティブ・ラーニングや特別支援教育に対応するために必要な教職員定数措置の拡充

(2) 学校のマネジメント機能の強化

  • 校長裁量経費の拡大等、学校の裁量拡大
  • 事務職員の配置拡充、職務規程の見直し
  • 管理職を補佐する主幹教諭の加配措置の拡充と育成のための実践的な研究プログラムを開発

(3) 教員一人一人が力を発揮できる環境の整備

  • 評価を任用・給与等の処遇や研修に適切に反映
  • 小規模市町村における指導主事配置を支援
  • 業務改善に関する取り組み事例をまとめた指針の作成  等

スクールソーシャルワーカーとは?

スクールソーシャルワークは、約100年前のアメリカで、不登校の生徒の支援などのために導入された訪問教師にそのルーツがあるとされています。日本においても従来から教員は積極的に家庭を視野に入れて対応してきました。平成7年のスクールカウンセラー導入に加えて、平成20年度からスクールソーシャルワーカーが導入された背景として、学校・家庭・地域の枠を超えたコーディネートや、学校におけるソーシャルワーク的なアプローチの需要が高まっていたことがあります。児童生徒の問題行動には、心の問題とともに、家庭や学校、友人、地域社会などの環境の問題が複雑に絡み合っているからです。

スクールソーシャルワーカーの要件として「スクールソーシャルワーカー活用事業実施要領」には以下のように書かれています。

社会福祉士や精神保健福祉士等の福祉に関する専門的な資格を有する者が望ましいが、地域や学校の実情に応じて、福祉や教育の分野において、専門的な知識・技術を有する者又は活動経験の実績等がある者のうち、次の職務内容を適切に遂行できる者とする。
(1) 問題を抱える児童生徒が置かれた環境への働きかけ
(2) 関係機関等とのネットワークの構築、連携・調整
(3) 学校内におけるチーム体制の構築、支援
(4) 保護者、教職員等に対する支援・相談・情報提供
(5) 教職員等への研修活動

福祉に関する専門的な資格を有する者が望ましいとされていますが、職務内容を遂行できるだけの経験や実績が重視されているようです。

配置状況としては、平成20年度の調査研究委託事業として国の取り組みが始まり、平成21年度に活用事業に変わり補助率が引き下げられた段階で一度減少していますが、その後は年々増加しています。(グラフ1参照)

グラフ1:スクールカウンセラー配置状況
文部科学省「チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会(第4回) 配付資料(参考資料 基礎資料)」(PDFファイル)より転載(一部加工)

文部科学省「チームとしての学校・教職員の在り方に関する作業部会(第4回)
配付資料(参考資料 基礎資料)」(PDFファイル)より転載(一部加工)

スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの協業

スクールソーシャルワーカーも、スクールカウンセラー同様、教職員だけでは対応が難しい児童生徒の悩みや問題の解決に向けて支援する専門家です。スクールカウンセラーは臨床心理の専門家、スクールソーシャルワーカーは社会福祉の専門家ですが、どちらも児童生徒や学校を取り巻く課題を解決しようとするため、その活動や役割には重なる部分も多く、役割が曖昧になることも懸念されています。

ここでは、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、教員が連携し、困難な問題に対して、様々な視点から解決に向けた取り組みを行ったという実践事例を紹介します。

【事例1】

学校がいじめを認知した時点で、教育委員会内に設置した「学校問題解決支援チーム」へ報告した。それを受けて、巡回型スクールカウンセラーが状況の確認を行った。家庭への支援が必要と判断されたので、スクールソーシャルワーカーが中心となり、医療機関や福祉関係部署、警察等との連携をはかり、相談・代行・代弁を行った。

【事例2】

不登校の生徒の保護者がスクールカウンセラーに相談したことをきっかけに、スクールソーシャルワーカーが家庭訪問を行い、保護者の養育の改善への助言と、当該生徒に対する学習支援が行われるように地域のサポート機関への働きかけ、保護者の就労に向けた手続きの支援を行った。生徒の置かれた家庭環境と学習環境両面の改善につながり、学校復帰することができた。

【事例3】

中学生の男子生徒の学校での器物損壊、母親に対する暴力について、学校から相談を受けたスクールソーシャルワーカーが情報を整理し、要因を分析、校内ケース会議を開き、具体的な支援方法を立案、役割分担を決めた。スクールカウンセラーは本人に気持ちが高ぶったときの感情のコントロール方法を伝え、学校は本人が落ち着いて授業を受けられるよう、関わりや指導を工夫した。

スクールカウンセラーが児童生徒や保護者から相談を受けたり、状況を把握したりした後、スクールソーシャルワーカーが学校からの情報等と合わせて整理・要因の分析を行い、役割分担、関係者調整を行う場合や、学校からスクールソーシャルワーカーが相談を受け、児童生徒や保護者との面談をスクールカウンセラーが行う場合などがあるようです。

これからのスクールカウンセラー

チーム学校で活用が提唱されている専門家のうち、教育相談に関るスクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの違いや、両者の協力の仕方とその成果についてご理解いただけましたでしょうか。

第2回で紹介したようにスクールカウンセラーは公立校への導入から20年が経ち、学校現場からの評価や要請を受けてその数の拡充を続けてきました。

スクールカウンセラー自体の課題としては、次のようなものがあります。

1点目は雇用条件です。期待される役割がカウンセリングのみならず多岐にわたるのに対し、週8時間程度の勤務時間であること、また児童生徒の発達を継続的に支援していく立場であるにも関わらず、多くが単年契約の非常勤職員であり長期間の勤続が保証されていないことがあります。

2点目はスクールカウンセラーの資質向上です。この資質は臨床心理における専門知識というよりは、現場で学校組織の一員としての自覚を持ち、いかに臨機応変に適切な判断と行動が取れるかという能力です。臨床心理士の都市部偏在という問題と共に、経験が浅いスクールカウンセラーが現場に対応できず定着しない現象が指摘されています。

これらの課題に対しては、1点目への対応として臨床心理士の国家資格化への動きと勤務日数増の試行、2点目への対応では、臨床心理士養成課程のカリキュラム見直しや、スーパーバイザー制度の導入があります。

では、受け入れる側である学校現場は、教育相談の充実に向けて何ができるでしょうか。

平成19年7月の文部科学省 報告では、各学校においては、教育委員会と協力してスクールカウンセラーの役割、業務を学校における教育相談体制の中で明確化し、全教職員が共通認識を持つことが必要であるとしています。また、運営上の具体的な例として、スクールカウンセラーの机を職員室に置くなどの情報交換を密にするための工夫を推奨しています。

さらに、チーム学校中間報告の直後、平成27年7月27日に各教育委員会に向けて出された「学校現場における業務改善のためのガイドライン」でも、教員以外の専門的人材を活用する上で、校長が中心となって学校運営組織の仕組みや、協力しやすい雰囲気づくりを行っていく必要性が述べられています。それと同時に、全教職員の職務に対する意識改革を進め、教員が悩みや負担を個人で抱え込みがちな現状を改善すべきであるとも述べられています。

校長や教職員の意識改革のためには、教員以外の職種についての理解を深め、教員以外の職種を活かし、教職員のチーム力を高める視点での研修実施が効果的であるとされています。また、主体性や責任感を有しながらも、課題に直面した際には早期に周囲に援助を求めることができる教員を評価するといった文化の醸成も重要であるとされています。

スクールカウンセラーは、教員とは異なる立場から、「外部性」を活かして専門的な知見に基づく新たな視点を提供することが期待されます。しかし、それと同時に学校組織の一員として管理職の指導や学校方針に基づき行動するべき存在でもありながら、学校現場の経験が豊富であるとは限りません。校長や教職員は、スクールカウンセラーを「職場仲間」として受け入れ、経験が浅い場合は「育成し、共に成長していく」存在であると考える必要があるのではないでしょうか。

「問題行動」とされている「いじめ」や「不登校」についての認識も時代と共に変わってきました。どの学校にでも、どの先生のクラスにでも、どの児童生徒にでも起こり得る状況であるというのが昨今の認識です。また、「問題行動」の原因は複雑に絡み合っていることからも、問題解決に柔軟できめ細かなアプローチが必要であるとわかってきました。スクールカウンセラー等の専門スタッフはそのような多様な問題解決のアプローチを実現するために活動しているとも考えられます。

これから変化の激しい時代を生きる子ども達が、学校生活の中で悩みと向き合いながらも成長していくために、スクールカウンセラーが、教員の右腕としてより一層力強いサポーターとなることを期待したいと思います。

≪おわり≫

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 足立智子・井上暁代

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