意外と知らない"アクティブ・ラーニングのねらい(vol.2)

意外と知らない

初等中等教育分科会の教育課程企画特別部会が2015年8月に発表した『論点整理』において、「アクティブ・ラーニング」は「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」とされています。アクティブ・ラーニングが注目される今、学校現場ではどのように取り組んでいけばよいのでしょうか。前回に引き続き、『論点整理』や他の資料も参照しながら確認していきます。

学び全体を改善する視点

第1回目の記事では、「アクティブ・ラーニング」が「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」であること、今後育成すべき資質・能力についてご紹介しました。今後育成すべき資質・能力は「三つの柱」に集約されています。

(1) 何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)
(2) 知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)
(3) どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)

『論点整理』では、この資質・能力を育成するために、アクティブ・ラーニングという方法を絶対使いなさい、と言っているわけではありません。むしろ、現在のように注目されすぎることで、本来の目的を見失い、特定の型の普及に留まってしまうことを懸念しています。教員には、学習過程全体を見渡し、子供の変化を踏まえて指導方法の見直しや改善に取り組んでほしいと書かれています。その上で、次のような「学び全体を改善する視点」が示されています。

[1] 習得・活用・探究という学習プロセスの中で、問題発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程が実現できているかどうか。
[2] 他者との協働が外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める、対話的な学びの過程が実現できているかどうか。
[3] 子供たちが見通しを持って粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる、主体的な学びの過程が実現できているかどうか。

各視点には、説明の文章がついています。簡単に紹介すると(本当は全文読んでいただきたいのですが)、[1]については、教える場面と子供たちに思考・判断・表現させる場面を効果的に設計し、関連させながら指導していくことが求められています。[2]については、前回改訂における各教科等を貫く改善の視点である言語活動の充実も引き続き重要であるとされています。[3]については、第1回でも述べたように、実社会や実生活に関わる主題に関する学習を積極的に取り入れることや前回改訂で重視された体験活動やその成果の振り返りも引き続き重要であるとされています。

つまり、これまでの指導で行ってきた言語活動の充実や体験活動、成果の振り返りなどを引き続き重視しつつ、教える場面と思考・判断・表現させる場面を意識した授業設計をしましょうということです。

アクティブ・ラーニングに相当する活動を採り入れた
授業の実施状況

もう一つ、アクティブ・ラーニングの実施状況や実施に際しての課題を明らかにするために実施された、校長並びに教員への意識調査をご紹介しましょう。2015年7月、一般財団法人教育調査研究所が発行した『小・中学校における「アクティブ・ラーニング」の現状と今後の課題』という報告書です。全国の小学校198校の校長先生と795名の教員、全国の中学校76校の校長先生と274名の教員からの回答がベースです。

調査結果を抜粋してご紹介します。「各教科等の授業において“体験的な学習や基礎的・基本的な知識・技能を活用した問題解決的な学習”の指導や、総合的な学習の時間を中心に“体験的な学習”や“協働的な学習”の指導が重視されていますが、その指導の状況をどう自己評価していますか」という問いに対し、小学校教員は、「十分に満足できる状況である」が4.8%、「おおむね満足できる状況である」が64.5%と回答しています。中学校教員は、「十分に…」が5.1%、「おおむね…」が59.1%です。この二つの選択肢を選んだ理由ですが、小学校、中学校共に最も多かった回答が「子供たちの主体的な学習が充実するよう、日々、指導を創意工夫している」という選択肢でした。2番目に多かったのは、活用の指導や探求的な学習、協働的な学習の指導について校内研修や校内研究で研鑽しているという内容です。

同様に、小学校の校長先生は、指導状況について肯定的にとらえている回答が45.0%、中学校の校長先生は46.0%となっており、その理由は、各種の学力調査において、全国学力・学習状況調査のB問題に相当する活用問題の成績が良かったことや教育課程において課題を解決する指導に重点を置いていること等が挙がっています。

このように、調査対象校(小学校、中学校)において、現状では、教員は、“問題解決的な学習”“体験的な学習”“協働的な学習”について、日々指導を工夫し、校内研等で自己研鑽していることから、おおむね満足できる状況であると認識しており、校長もそのような指導に力を入れ、その結果が出ていると認識していることがわかっています。

アクティブ・ラーニングに相当する活動を採り入れた授業と学力

さて、現状では、どの程度、アクティブ・ラーニングを意識した授業が実施されているのでしょうか。現状を理解するための調査結果をご紹介します。

2015年度(平成27年度)全国学力・学習状況調査の学校質問紙では、アクティブ・ラーニングを意識した質問があります。

【質問35:調査対象学年の児童生徒に対して、前年度までに、学級やグループで話し合う活動を授業などで行いましたか】
【質問36:調査対象学年の児童生徒に対して、前年度までに、総合的な学習の時間において、課題の設定からまとめ・表現に至る探求の過程を意識した指導をしましたか】
【質問37:調査対象学年の児童生徒に対して、前年度までに、授業において、児童生徒自ら学級やグループで課題を設定し、その解決に向けて話し合い、まとめ、表現するなどの学習活動を取り入れましたか】
(参照:「平成27年度 全国学力・学習状況調査 報告書 質問紙調査 pdf」(PDF)より)

例えば、【質問37】について、小学校国語B問題の平均正答率を見ると、「全く行っていない」と答えたグループの平均正答率が59.3%であるのに対し、「よく行った」と答えたグループの平均正答率は67.3%となっています。同様に、いずれの質問においても、話し合いや探求の過程を意識した授業を実施した度合いが高まるにつれて、平均正答率も高まるという傾向です。学習活動の成果が学習成果として表れていると言えます。
(参照:「平成27年度 全国学力・学習状況調査の結果」P7 pdf (PDF)より)

どのように評価するのか

ここまで来ると、その評価方法が気になるところです。子供の個々の資質・能力を評価しているのか、教員が実施した授業そのものを評価しているのかを混同してはいけません。本稿では、子供の学習評価に着目します。

学習評価の観点は、皆さんご承知の通り、現在は「知識・理解」「技能」「思考・判断・表現」「関心・意欲・態度」の4観点ですが、次期学習指導要領においては、冒頭で述べた育成すべき資質・能力である「三つの柱」に合わせる形で「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点へと整理することが検討されています。

奈良学園大学学長の梶田叡一氏は、学校で用いる主要な七つの評価方法が、どの評価側面に適しているかについて分類しています。

表1:各評価側面に適した評価方法(梶田1983)
   評価側面

評価方法   
興味・関心
知識・理解
思考力論理力
態度
技能
標準テスト
 
 
教師作成テスト
 
 
質問紙法
 
 
 
問答法
 
観察記録法
レポート法
製作物法
 
 
◎はその評価側面にふさわしい評価方法を、○印は評価可能な評価方法を表す。
出典:梶田叡一(1983)『教育評価』より

 

教員の皆さんは経験的に実施されているかと思いますが、表を見ると、知識・理解にはペーパーテスト、態度を評価するにはレポート(活動の振り返り、感想文等)が適していることがわかります。

アクティブ・ラーニング、すなわち「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」によって育んだ資質・能力を評価するには、ペーパーテストの結果だけでなく、知識やスキルを使いこなすことが必要な論述やレポートの作成、発表、グループでの話し合い、作品の制作等といった多様な活動の実績を評価することが必要とされています。『論点整理』では、これらを「パフォーマンス評価」と呼んでいますが、「パフォーマンス評価」については、以前の記事「意外と知らない“全国学力・学習状況調査”(2)blankをご覧ください。もちろん、発達段階に応じた評価方法を選択する必要があるでしょう。

併せて、日々の記録やポートフォリオなどを通じて、学習過程でも評価を行う(形成的評価)ことも考えられています。それは、子供たち自身が自分の成長を把握し、学習内容の価値に気づく、すなわち、子供たちを生涯学び続ける学習者として育成するという意味もあると考えられます。

まとめにかえて

現状の学習指導要領の下で取り組んできた、言語活動や体験活動、振り返りなどが重視されていることや形成的評価を実施することなど、アクティブ・ラーニングと言っても、新しく何かに取り組まなくてはいけない、ということではないように見えます。先に紹介した二つの調査からも、教員は、アクティブ・ラーニング的な学習活動について、日々指導を工夫し、校内研等で自己研鑽していることからおおむね満足とし、その成果も学力・学習状況調査の結果に表れているようです。

それでも、やはり私達は、現在の授業で行っている、「隣同士で話し合いをする活動」や「グループで学び合う活動」が表面的、形式的なものになっていないか、アクティブ・ラーニングという指導方法を実施しているという証拠づくりの活動になっていないか、本稿の冒頭で述べた「学び全体を改善する視点」を持って、学校全体で確認していく必要があると考えます。

≪おわり≫

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各教科でどのようにアクティブ・ラーニングに取り組めばよいかについては、ここまでご紹介してきた『論点整理』に「各教科・科目等の内容の見直し」として議論の方向性が示されています。『総合教育技術』(小学館)の10月号には「小・中学校各教科別 アクティブ・ラーニングの授業ここがポイント!」と題して、文部科学省の教科調査官への取材記事が掲載されています。『小・中学校における“アクティブ・ラーニング”の現状と今後の課題』(教育調査研究所 研究紀要第95号)では「アクティブ・ラーニングの現状と課題に向けた提言」として、各教科の有識者の原稿が掲載されています。それぞれ、教科ごとのポイントを知るためにはお薦めです。

参考資料

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 中尾 教子

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