意外と知らない"学校教材(理科編)"(vol.3)

意外と知らない学校教材(理科編)(vol.3)

理科教材の流通経路や、特徴的な商品など、学校教材のオモテ・ウラをお話ししてきた今回のシリーズ。最終回は、先生方のアイデアを商品化する「発明考案品懸賞募集・アイデア募集」、実験器整備の強い味方「理科教育振興法」、そして、商品ごとに工夫を凝らした「理科実験の安全管理」について紹介します。

 

あなたの発明・アイデアが商品に! ~60年続く“発明考案品懸賞募集・アイデア募集”~

先生方の発明・アイデアが商品化されていることをご存知でしょうか。各教材メーカーでは、教材開発担当者が知恵を絞りながら、現場でたくさん使ってもらえる商品を仕上げることに日々苦心しています。この他にも、先生方から応募された授業や実験に関する優れた発明やアイデアを、商品化させていただくこともあります。

内田洋行が、毎年(2月末締め切り)開催している「発明考案品懸賞募集・アイデア募集」は、2016年で58周年となる歴史あるイベントです。尚、この二つの募集は、先生からの応募という意味では同じですが、現物作品があるのが「発明考案品懸賞募集」、アイデアのみの応募になるのが「アイデア募集」という違いがあります。審査会では大作が上位入賞の傾向にありますが、商品化という観点で見ると、ちょっとしたアイデアや工夫の方が採用されている傾向にあります。

例えば、「スイッチ付きリード線」は2007年の考案品です。電気の入・切を実験の中で行うには、スイッチを回路に組み込むか、リード線を着脱する必要がありました。このスイッチ付きリード線を使えば、入・切をリード線だけで完結でき、回路もシンプルに構成できるというものです。他にもこういった商品化された考案品・アイデアは、カタログの中に「○○県 ○○先生ご指導」として掲載されます(希望者のみ)。商品化されれば、先生の発明・アイデアが全国の学校で活用されることとなり、販売量に応じて考案料も入ります。アイデアをお持ちの先生は応募されてみてはいかがですか?

実験器が足りなくてお困りの先生へ
~あなたは「理振」を知っていますか?~

学校の先生、特に理科、算数・数学を教えていらっしゃる先生方、「理振」という言葉をご存じですか。正確には「理科教育振興法」という昭和28年に制定された法令を指し、理科教育及び算数・数学教育のために必要な設備整備経費の一部を補助する制度を意味します。

一言で言うと、「申請をすることで、学校の負担分無く、実験器等の整備が行える制度」です。詳しくは文部科学省のページblank や、日本理科教育振興協会のページblank 等を見て頂くとして、ここでは「超早分かり版」として、Q&A形式で簡単にご紹介します。知っていると知っていないとでは整備計画に大きな違いが出てきます。

Q1:何を購入する時に適用されますか?

A1:理科、算数・数学に関わる教材、つまり実験観察用具や算数数学教具が対象となります。パソコンや電子黒板等のICT機器は対象外となりますが、例えば「デジタル顕微鏡」は、顕微鏡の扱いとなるので対象となりますし、「パソコン計測機器」も同様に、実験支援器具の扱いとして対象となります。また、実験動画を収めたDVD等のソフト教材も対象となります。対象となるかどうかについては、文部科学省が出している設備整備品目(PDF)をご参照頂くか、日本理科教育振興協会blank に問い合わせをして確認することもできます。また、価格に関して制限があり、取得価格(税込)が小学校の場合は単価1万円未満、中学校の場合は2万円未満、高校の場合は4万円未満のものは対象外となります。

Q2:学校は1円の負担も無いと聞いたのですが本当ですか?

A2:正確には購入金額の内、50%を国が補助し(沖縄県は4分の3を補助)、残りを地方自治体、学校法人が負担することになります。ですので、公 立学校 の場合でしたら1円の負担も無いと言えます。少し細かい話になりますが、東京都内の私学は学校負担分の1/2を都の予算で更に負担してもらえます。

Q3:購入数に制限はありますか?

A3:購入数の目安(標準学級数の学校を想定)はありますが、数量の縛りではありませんので、学校で独自に必要である数量を整備できます。交付決定という国からの通知があれば、自治体、学校法人は購入できます。この交付決定は毎年6月下旬頃です。

Q4:誰に申請すれば良いのですか?

A4:公立学校は自治体に対して申請を行います。ですので、そもそも自治体が理振の予算を組んでいなければ理振はありません。また、私学の申請先は各都道府県となります。文部科学省とのやり取りは、自治体も私学もすべて各都道府県が窓口となります(私学は3月の希望調書の段階で応募しなければなりません)。

Q5:申請手続きは大変ですか?

A5:そもそも申請するには、現在学校にどの実験器が何台あって、という情報を記載した、文部科学省が定める整備台帳を作成しておかなければなりません。今まで理振申請を行ったことの無い学校は、まず台帳を作成する所から始めましょう。台帳を作成するということは、いわゆる理数教材(理科室・準備室等)の棚卸作業になりますので、それなりに手間はかかるでしょうが、理数教材として何があって何が足りていないのか、この際ハッキリさせる良いチャンスとも言えます。事業の流れ自体は、ほぼ毎年同じです。3月に国から、各自治体・学校法人に希望を伺い、5月に交付申請、6月に交付決定の後、購入を始め、実験器がすべて納品されたら、事業報告書を提出します。手続きやその方法においても、わからない場合は学校の事務担当者や所属の教育委員会、日本理科教育振興協会blank に聞きましょう。

Q6:制度を利用したいと思いますが、商品選びが大変そうですね。

A6:国から学校に整備すべき品目と数量の目安が示されているのでそれを参考にすることができます。その中で、特に重点的に整備する必要性が高い実験器に関しては「重点設備」としてマークがついていますので、まずはそれらの整備を確実に施すことから始めても良いでしょう。また、日本理科教育振興協会blank や教材メーカーからは基準に沿った小中高別の商品選定がし易いリスト類も出ていますので、それらを使うと便利です。

理科実験の安全管理 ~商品視点編~

理科の実験に危険は付き物といったら言い過ぎでしょうか。しかしながら事故が起きてしまうのも事実。正直、気を付けることは多すぎて挙げ切れないのですが、ここでは商品的な観点で、かつ盲点的な事例をいくつか取り上げてご紹介いたします。

【太陽観察】

太陽の黒点や日食時などに太陽を肉眼観察する際、特殊加工されたガラスやフィルム等を通して太陽観察を行います。今でこそ、専用の遮光板等の器具を使って太陽観察することが一般的ですが、かつては黒い下敷きや、撮影に失敗した写真のフィルム、場合によってはガラスにろうそくで煤を付けただけのものなどを使って観察されていました。

そういったものを使っても可視光線は遮られて暗くなるので、一見、十分に遮光されたと勘違いしている人がいますが、実はそういったフィルターをほぼ素通りしている赤外線が危険なのです。しかも暗くなって瞳孔が開いているから余計に危ない。目の中で火傷を起こします。

ですから、これらを使っての太陽観察は、目に致命的なダメージを与える要因となり、現在では絶対にしてはならないことは常識ですが、太陽観察用として出回る遮光板の中には、一部で製造元不明な商品もあるなど、ものによってはその遮光性が十分でないものもあるようです。一度ダメージを受けるとその被害は深刻なだけに、信頼性のある商品を選ぶことが重要です。目安としては、信頼できるメーカー品とわかるものか、カタログ等の商品仕様にJIS規格(T8141)に沿った商品とあれば安心でしょう。

尚、商品は大きく2種に大別され、価格重視であれば、本体が厚紙製で、遮光部に特殊フィルムを使用したタイプを選び、耐久性重視であれば、本体が樹脂製で、遮光部に特殊ガラスを使用したタイプを選ぶと良いでしょう。いずれもJIS規格準拠であれば遮光の程度に問題はありません。

【誘導コイルを使用した空中放電や陰極線実験】

理科実験の中でも、空中放電やクルックス管に現れる陰極線の観察・実験が印象に残っているという方は多くいます。確かに、空中放電のバリバリとまさに空気を切り裂くような音や、クルックス管の美しい蛍光色の輝きは印象的です。このいずれの実験でも超高電圧を発生させる誘導コイルを用いますが、最大10万ボルトの電圧が発生するだけに、漏電・感電には注意が必要です。実験中に不用意に手を伸ばさないことは当然ながら、クルックス管との接続に使用するリード線の被膜の破損が、意外と多い盲点ですので、ここは意識して注意するようにして下さい。不意な事故を防止する防護カバーが付いたタイプを使うことなどもお勧めです。

【加熱実験】

加熱実験では、アルコールランプに代わり、理科実験用のミニコンロが使われるようになってきていますが、ホームセンター等で販売されている鍋用のミニコンロと違いはあるのでしょうか。あります。一点加熱が出来るか出来ないかが最大の違いとなります。また、アミの形状も理科実験を想定した形状(ビーカーを載せた際の安定性が高い)になっているなど、理科実験には専用のミニコンロの使用が推奨されます。一方、ミニコンロを使用する際の注意点としては、ガスボンベが装着されていない状態でツマミを回して着火する場合があることです。これはガスボンベを取り外しても、本体内のガス管に残留しているガスに着火することがあるためです。ガスボンベを装着していないからといって、子ども達がむやみやたらにツマミを回すことなどには注意する必要があるでしょう。尚、最近のモデルではガスボンベが装着されていないとツマミが回せないように改良されてきています。

また、加熱実験の代表例としては、試験管の中の液体・試薬の加熱がありますが、その際は鉄製スタンドで試験管を保持する場合が多くあります。その際、加熱の火の大きさや位置が適切でなく、スタンドの樹脂製留め具(直角クランプ)に燃え移るという事例が過去に発生しました。また、留め具が金属製の場合は、加熱されていることに気付かず火傷の危険性もあります。火そのものへの注意と、試験管が熱くなっている認識は十分であっても、支える側の鉄製スタンドは盲点になりがちです。ただ、こちらも最近のモデルでは難燃性樹脂を使用した安全配慮型となってきています。

まとめ

以上3回にわたり、商品視点で学校教材、特に理科実験器について述べてきました。

2015年は、3年ぶりに全国学力・学習状況調査において理科が出題されましたが、その調査結果では、「理科室で観察や実験の回数」が多いほど、また、「自分の予想をもとに観察や実験の計画を立てている」ほど、平均正答率が高くなっていることがわかっています。必要に応じて理振などを上手に活用し、計画的な整備の下、子ども達へ実験・観察の機会を増やしてあげたいですね。

≪おわり≫

 

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 田中俊成

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