意外と知らない"学習指導要領の改訂"(vol.3)

意外と知らない学習指導要領の改訂(vol.3)

今まさに次期学習指導要領の「三つの柱」、アクティブ・ラーニングの「三つの視点」の下で議論されている、各教科・科目の指導内容の改訂の方向性について順に紹介します。第3回は、国語、社会、算数/数学、理科、英語を取り上げます。

2016年4月現在、中央教育審議会は、次期学習指導要領が各教科においてどのような資質・能力の育成を目指すのかを「三つの柱」の下に整理しながら、それらの資質・能力を総合的に育成するための学習・指導方法の改善充実の在り方について「三つの視点」から議論しています。

次期学習指導要領の「三つの柱」

  1. 何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)
  2. 知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)
  3. どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)
    ※「三つの柱」の詳細については、以前の記事『意外と知らない”アクティブ・ラーニングのねらい”』 で詳しく取り上げていますので、そちらをご覧ください。

アクティブ・ラーニングの「三つの視点」

  1. 習得・活用・探究という学習プロセスの中で、問題発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程が実現できているかどうか。
  2. 他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める、対話的な学びの過程が実現できているかどうか。
  3. 子ども達が見通しを持って粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる、主体的な学びの過程が実現できているかどうか。

検討体制は次のようになっています。各部会・ワーキンググループ・チームで、定期的に会議が開かれており、メールで申し込めば誰でも傍聴することができますし、配布資料も文部科学省のホームページからダウンロードすることができます。

文部科学省 報道資料「次期学習指導要領改訂に向けた検討体制」(PDF)より転載

(文部科学省 報道資料「次期学習指導要領改訂に向けた検討体制」(PDF)より転載)

【国語】 表現力・言語文化理解重視

国語は、個人にとっては「知的活動」「感性・情緒等」「コミュニケーション」の基盤であり、社会全体にとっては、文化を継承・創造・発展させると共に、社会を維持・発展させる基盤です。価値観の多様化、都市化、少子高齢化、国際化、情報化などの社会変化に対応するためにも重要な教科です(これからの時代に求められる国語力について(PDF) )。

日本の児童生徒の読解力は世界的に見て高い水準にありますが、「伝えたい内容を明確にして表現したり、文章の内容や形式等を正確に理解したりすること」や「課題を解決するために、必要な情報を収集し的確に整理・解釈したり、自分の考えをまとめたりすること」が苦手です。また、アンケートで中学高校生の7割以上が「古典が好きではない」と回答していることも課題です(国語科に関する資料(PDF) P.18)。

そこで、(1)古典も含む我が国の言語文化に親しみつつ、言語活動を通じて課題を解決する能力や、(2)情報活用能力の育成、(3)現代の文化・社会の在り方や日本人としての生き方等にもつながる古典の学習の充実、(4)他者と異なる新たな考えや価値を創出し表現する活動の充実等が検討されています。同じ題材を教材にして日本語と外国語の違いに気づかせる等、外国語教育と効果的に連携した指導の在り方も議論されています。

また、今まで高等学校の授業は教材の読み取りが中心でしたが、もっと話合いや論述など「話すこと・聞くこと」「書くこと」の学習を増やしたり、古典に対する興味・関心を高めたりするために、共通必履修科目として、実社会・実生活に生きる国語の能力に関する科目「現代の国語(仮称)」、古典を含む我が国の言語文化に関する科目「言語文化(仮称)」の設置が検討されています。

【社会、地理歴史、公民】 新科目「歴史総合」「地理総合」「公共」の検討

社会は、社会的事象に関心を持って多面的・多角的に考察し(事実認識)、公正に判断する能力と態度(価値認識)を養い、社会的な見方や考え方を成長させる教科です。

歴史分野では「世界史も日本史も近現代史の学習の定着状況が低いこと」が、地理分野では「最低限の地理的知識を持たずに高校を卒業する生徒が増えていること」や「海外や異文化一般への関心の後退」が課題です。公民分野では政治や経済の仕組み、働く意義等を学ぶことへの関心は高いものの、「積極的に社会参加する意欲が国際的に見て低いこと」や「理論や概念の理解、情報活用能力が十分身についていないこと」が課題です。(社会・地理歴史・公民に関する資料(PDF) P.12~15)。

高等学校の共通必履修科目として、「歴史総合(仮称)」、「地理総合(仮称)」、「公共(仮称)」の設置が検討されています。それぞれの内容は次の通りです。

科目名
内容
歴史総合(仮称)
我が国の伝統と向かい合いながら、自国のこととグローバルなことが影響し合ったりつながったりする歴史の諸相を、近現代を中心に学ぶ
地理総合(仮称)
現行の地理B科目のうち、技能を扱う分野を中心に学び、持続可能な社会づくりに必要な地理的な見方や考え方を育む
公共(仮称)
家庭科や情報科をはじめとする関係教科・科目とも連携しながら、キャリア教育の観点から経済、法、情報発信などに対して主体的に参画するために 必要な力を、人間としての在り方生き方の考察と関わらせながら実践的に育み、受け身ではなく自分たちが公共をつくり上げていくという生徒の自覚を養う
また、民主主義や自由・権利と責任・義務、相互承認など「公共的な空間における基本的原理」を学ぶ

育成すべき資質・能力は次のように整理されています。

 
個別の知識や技能(何を知っているか,何ができるか)
思考力・判断力・表現力等(知っていること,できることをどう使うか)
情意・態度等に関わるもの(どのように社会,世界と関わりよりよい人生を送るか)
歴史総合(仮称)
・日本及び世界の歴史の考察に関わる概念の理解
・歴史に関わる諸資料を活用する技能
・自国の歴史・グローバルな歴史を横断的・相互的に捉え、諸資料を活用して、歴史に関わる諸課題を考察する力
・国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚など
・歴史に関わる諸資料を活用する技能
地理総合(仮称)
・地図や地理情報システムなどの地理的な技能
・地球規模の自然システム、社会・経済システムの理解
・位置や分布、場所、地域などの空間概念を捉え追究する地理的な見方や考え方
・持続可能な社会づくりに向けて、地球的課題や地域的課題、解決を模索する態度など
公共(仮称)
・現代社会の諸課題を捉え、考察し選択・判断していくために必要な概念的な枠組みの理解
・国家・社会の形成者として必要な選択・判断を主体的に行い、他者と協働しながら様々な課題を解決していく力
・社会参画への意欲や態度
・現代社会に生きる人間としての在り方生き方についての自覚など

また、新選択科目として「日本史に関わる探究科目」、「世界史に関わる探究科目」、現代世界の系統地理的考察、現代社会の地誌的考察、現代日本に求められる国土像からなる「地理に関わる探究科目」、自立して思索を行うと共に生きる主体を育む「倫理」、国家と社会の形成により積極的な役割を果たす主体を育む「政治・経済」が検討されています。

【算数・数学、理科】 新科目「数理研究」の検討

算数は、算数的活動を通して、数量や図形についての基礎的・基本的な知識及び技能を身につけ、日常の事象について見通しを持ち筋道を立てて考え、表現する能力を育てると共に、算数的活動の楽しさや数理的な処理の良さに気づき、進んで生活や学習に活用しようとする態度を育てる教科です。
また理科は、自然事象を説明できる法則や理論を構築していくという科学の目的の視点を持って、エネルギー、粒子、生命、地球の4領域で、自然に親しみ、自然の事物・現象に対する関心を高め、目的意識を持って観察、実験などを行い、科学的に調べる能力と態度を育てると共に自然の事物・現象についての理解を深め、科学的な見方や考え方を養う教科です。

アンケートで「数学の勉強は楽しい」と回答した中学校2年生は5割で、国際平均の7割に比べて低く、また「数学を勉強すると日常生活に役立つ」と回答した中学校2年生は7割で、国際平均の9割よりも低い結果でした(算数・数学に関する資料(PDF) P.12~13)。

また「理科の勉強は楽しい」「理科を勉強すると日常生活に役立つ」と回答した中学校2年生はいずれも6割で、国際平均の8割に比べて低い結果でした。「理科の勉強が好きだ」と回答した割合は、小学校6年生と中学校3年生の間で2割も低下します(理科に関する資料(PDF) P.12~13)。

そこで、数学的な考え方を習得し、学習する楽しさや学習する意義を実感できるように、数学と理科の知識や技能を総合的に活用して主体的な探究活動を行う新たな選択科目「数理探究(仮称)」の新設や、「数学活用(日常生活や社会の事象を数理的に捉え、数学的に処理し、問題を解決する学習)」の在り方が検討されています。「探究の技能」として(1)観察する技能、(2)分類する技能、(3)仮説を立てる技能、(4)変数を制御する技能、(5)測定する技能、(6)解釈する技能、(7)推論する技能について、また観察・実験の結果を(8)伝達する技能について議論されています。

数理探究(仮称)の基本原理

  1. 教科・科目の枠にとらわれない自由な視点で事象をとらえ(総合性)、
  2. 数学的なものの見方・考え方や科学的なものの見方・考え方を柔軟な発想で活用したり、組み合わせたりしながら(融合性)、
  3. 探究的な学習を行うことを通じて(手立て)
  4. 新たな価値の創造に向けて粘り強く挑戦する力の基礎を培う(挑戦性、アイディアの創発)

【外国語】 小学校の英語教科化

外国語は、言語や文化に対する理解を深め、他者を尊重し、聞き手・話し手・読み手・書き手に配慮しながら、外国語で積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図ると共に、身近な話題から幅広い話 題についての理解や表現、情報・意見交換等ができるコミュニケーション能力を養う教科です。

国際共通語としての英語を使って「どのように社会・世界と関わり、より良い人生を送るか」という観点から、児童生徒が将来の進路や職業などと結び付けて主体的に取り組む態度を育成すること、また、現在目標としている英語力を達成している生徒は公立中学3年生で3~4割、公立高校3年生で3割ですが(中学校等における英語教育の改善について参考資料(PDF) P.9)、抜本的な強化を行い、高等学校段階で日常生活から社会問題・時事問題など幅広い話題について、生徒の英語力等の状況に応じた発表、討論・議論、交渉等を行う言語活動を豊富に体験し、情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を養うことが目標に掲げられています。

小学校では、中学生1年生の8割が、外国語活動で「英単語・英文を読む」「英単語・英文を書く」ことをもっとしておきたかったと回答する等、小学校の外国語活動において音声中心で学んだことが、中学校での文字の学習に円滑に接続されていないという課題があります。平成23年度より、小学校において新学習指導要領が全面実施され、第5・第6学年で週1コマ程度の「外国語活動」が必修化されましたが、今後小学校3年生から外国語活動を行い「聞く」「話す」体験(週1コマ程度)、5・6年生では教科化に向け「読む」「書く」指導を行うための時間も確保する(10~15分程度のモジュール学習も含め、週2コマ程度に増やす)ことが検討されています。

現在「発話の半分以上を英語で行っている」中学校教員は4割強ですが、中学校から授業を英語で行うことを基本とすること、生徒が英語で言語活動をする場面を増やすことが検討されています。

高校卒業までに身につけたい 能力として、CEFR(Common European Framework of Reference for Languages;ヨーロッパ言語共通参照枠。2001年に欧州評議会(Council of Europe)によって発表された、外国語能力の参照基準。A1~C2の6レベルで構成されている)のA2を設定することが検討されています。A2は「ごく基本的な、直接的に関係する領域(例えば、個人や家族の情報、買い物、近所、仕事)に関する、よく使われる表現が理解できる。ごく身近な範囲において、単純かつ日常的な話題に関する情報を交換できる。自分の背景や周囲の状況や、差し迫って必要な領域の事柄について、簡単な言葉を使って説明できる」というレベルで、英検なら準2級、TOEICなら385~785点に相当します。

平成27年度英語力調査では、A2レベル以上の高校3年生の割合は、「読む」「聞く」で3割、「書く」で2割、「話す」で1割という結果でした。「英語の学習が好きではない」と回答した生徒が半数超えている(中学校3年生でも4割以上が「英語の学習が好きではない」と回答している)ことも課題です。「話す」「読む」のスコアが高いほど「英語の学習が好きだ」 と回答した生徒の割合が高いそうです(平成27年度 英語力調査結果(高校3年生)の速報(概要)(PDF) P.2、5)。

CAN-DO形式での学習到達目標を、中学校の2~3割、高等学校の3~6割程度が設定しています(中学校等における英語教育の改善について参考資料(PDF) P.9)。設定している地域を増やすとともに、達成状況まで把握している学校を増やすことが検討されています。

次回・最終回は、他の教科・科目の検討状況をご紹介いたします。(当記事は2016年3月末時点の情報を元に構成しています)

≪第4回へ続く≫

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 江本真理子

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