意外と知らない"英語教育の動向"(vol.1)

意外と知らない

「意外と知らない"学習指導要領の改訂"(3)」でも一部紹介しましたが、2020年以降に実施が予定される次期学習指導要領では英語教育のあり方が大きく変わります。日本の英語教育がどのように変わろうとしているのか2回にわたって取り上げます。今回は、小学校外国語活動について見ていきましょう。

2013(平成25)年12月、文部科学省が「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を公表しました(参照:「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」について )。

この中で示されている、今後の英語教育の方向性の概要は次の表の通りです。

 
新たな英語教育のあり方
目標
小学校
(中学年)
・活動型の授業
・週1~2コマの授業
・学級担任を中心に指導する
・英語を用いてコミュニケーションを図る楽しさを体験することで、コミュニケーション能力の素地を養う
小学校
(高学年)
・教科型の授業
・週3コマ程度
・専科教員の積極的活用をする
・読むことや書くことも含めた初歩的な英語の運用能力を養う
中学校
・英語で授業を行うことを基本とする
・身近な事柄を中心に、コミュニケーションを図ることができる能力を養う
CEFR A1~A2程度
(英検3級~準2級程度)
高等学校
・授業を英語で行う
・言語活動を高度化する(発表、討論、交渉など)
・英語を通じて情報や考え方などを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を養う
CEFR B1~B2程度
(英検2級~準1級、TOEFL iBT57点程度以上 等)

次期指導要領改訂では小・中・高校を通じた改革が行われようとしています。グローバル化に対応した教育環境づくりを進めるため、小・中・高校のそれぞれの段階で目指す力が、現行の学習指導要領のものに比べて全体的に引き上げられています。具体的には、現行の学習指導要領において高校卒業時に目指す英語力はCEFR A2~B1程度(英検準2級~2級)ですが、次期学習指導要領ではCEFR B1~B2程度(英検2級~準1級、TOEFL iBT 57点程度以上)とされています。

子ども達が学校で最初に英語に触れることになる、小学校での外国語活動は、どのように変わるのでしょうか。教材、授業時間、教員の面から順に紹介します。

外国語活動のはじまり

外国語活動は、2011(平成23)年度の小学校学習指導要領改訂の際に、小学校5・6年生において、週1回導入されました。それまでも、各学校の裁量において、総合的な学習の時間の国際理解の一環として外国語活動は行われていましたが、この学習指導要領改訂を機に、全国の小学校で足並みをそろえて1年間に45分×35回の外国語活動がスタートしたのです(2011年に開始された外国語活動の狙いを、前教科調査官の菅正隆氏と現教科調査官の直山木綿子氏にインタビューした記事「【学びの場.com特別企画】 小学校 外国語活動の開始に向けて ~文部科学省 教科調査官に聞く~ 」も合わせてご覧ください)。

2020年に予定される学習指導要領改訂では、小学校3・4年生では外国語活動が始まり、5・6年生では教科としての英語の授業が始まります。新たに始まる3・4年生での学習の目標や内容は、5・6年生で行われていたものと同様になりますが、学習の手法や教材などは3・4年生の発達段階に合わせたものになると考えられます。例えば、現在小学校に配布されている教材の「Hi, friends! 2」の最後のレッスンのテーマは将来の夢ですが、このテーマがそのまま小学校 4年生の最後のレッスンにスライドすることはないと筆者は予想します。現在と同様に6年生の終盤でこのテーマが扱われ、各自が夢をより具体的に語るための語彙や表現を増やすことや、発表後のクラスメイトとの質疑応答などのやり取りを行うことなどを目標として、同じテーマでありながらも、英語で行うことが少しずつ高度化すると考えられます。

外国語活動の教材

5・6年生の外国語活動向けに、文部科学省が作成した教材が配布されています。2009~2011(平成21~23)年度は「英語ノート」、2012(平成24)年度以降は「Hi, friends!」及び補助教材です。

これらの教材は、テキストだけでなく、教師が指導に活用する提示型のデジタル教材、音声CDがセットになっています。教材が配布されるからといって、必ずしもテキスト通りに授業を行う必要はないため、地域や学校独自の教材や活動などを取り入れながら授業が行われています。

テキストや、指導者用のデジタル教材には、単語や表現を学ぶための教材だけでなく、教師やクラスメイトとコミュニケーションをとるためのアクティビティに使える教材が充実しているという特徴があり、教師が「Repeat after me.」などと言って反復練習を促さなくても、アクティビティを通して、児童が自然な形で単語や表現に親しめるよう工夫されています。

また、現在教科化に向けて新しい教材の開発が進められています。「英語教育の在り方に関する有識者会議」報告(平成26年9月)における提言を踏まえて、文字の認識や英語の音声・文構造への気づきに関する指導に使える補助教材「Hi, friends! Plus」が作成され、研究開発学校などで試行的に活用されています。この教材には、文字の認識のために、イラストの中に隠れているアルファベットを探す教材や、アルファベットの書き方をなぞって練習できるワークシートが用意されています。ワークシート類はサイトにアップされており、研究開発校以外でも使えるようになっています(音声ファイルはアップされていません)。

また、この教材は2015~2016(平成27~28)年度の2年間を通じて効果検証が行われます。効果検証された結果は、次期学習指導要領の改訂時に活用されるだけでなく、次期学習指導要領改訂までの移行期間に向けて開発予定の教材にも生かされるようです。

「モジュール授業」で授業時数を確保する

現在の小学校5・6年生の外国語活動は、週1コマの取り組みですが、教科化に向けて授業時数は週3コマと大幅に増える見込みです。15分×3回で45分の1コマ分の授業とする「モジュール授業」を用いて授業時数を確保することも、「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」では示されています。

モジュール授業では、45分で行う活動を3回に分けて行うことが狙いではなく、45分の授業で学んだ表現などを定着させるために、聞き取りや発音の練習などの活動を行うことが想定されています。

教員の配置や教員養成課程の動き

小学校の教員になるのに必要な免許は「二種免許状」「一種免許状」の二通りがあります。これらを取得するには、教員養成課程に進むなどして、教育職員免許法が定める免許取得に必要な単位を修める必要があります。必要な単位には、教職・教科に関する科目と、それ以外に教育職員免許法施行規則で定められた科目の「日本国憲法」「体育」「外国語コミュニケーション」「情報機器の操作」「介護等体験」が含まれています。

小学校外国語活動は教科ではないため、上記の“教科に関する科目”にあたる「英語科教育法」は、小学校教諭免許の取得条件にはなってはいません。先に挙げた教育職員免許施行規則で定められた科目の「外国語コミュニケーション」で英語を学ぶことで、最低限の対応ができると考えられているようです。

現状では、高度な英語指導力を備えた専科教員としても指導が可能な人材の確保が急務とされています。東京都では平成29年度の教員採用試験から、「小学校全科(英語コース)を新設し、小学校教諭普通免許状に加えて、英語の中学校または高等学校教諭普通免許状を取得もしくは取得見込みの専門性の高い教員を募集する動きがあります。その他、愛知県などでは、TOEIC、英検、TOEFLなどの英語試験で一定以上の成績を持つ応募者には、採用試験の1次選考に加点をする動きもあります。これらは、文部科学省による「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」でも示された、専科教員の積極的活用が動き始めたといえます。

また、研修や指導体制の強化も必要とされており、校内研修や、初任者研修での学級担任英語指導力向上研修などが計画されています。さらに、ICT教材等を活用して学級担任自身の英語力を強化することも必要とされている一方で、JETや民間のALT等の外部人材の活用促進も計画されています。外国語活動において、学級担任の教師に求められるのは必ずしも“流暢”に英語を話す力ではありません。クラスでコミュニケーション活動を行うときには、教師は「英語を学び、使うロールモデル」として、相手に伝えようとする態度や相手の話に耳を傾ける姿勢を示すことも必要です。自らが他者とのコミュニケーションを取るお手本としての役割が、より大きくなるでしょう。

次回は、次期学習指導要領改訂に伴う、大学入試の英語の展望についてご紹介いたします。

≪第2回へ続く≫

構成・文:内田洋行プロダクト企画部 須藤綾子

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