意外と知らない"学校図書館"(vol.2)

意外と知らない

 

前回は、学校図書館の法的根拠、制度・施策の動き、蔵書整備についてご紹介しました。今回は、学校図書館に期待されていることや、学校図書館に必要な人材像について解説します。

 

学校図書館の機能と役割

学校図書館にはどのような機能や役割が求められているのでしょうか。

学校図書館法第二条には、学校図書館を設ける目的は、図書館資料を児童生徒や教職員の利用に供すること等により、「学校の教育課程の展開に寄与するとともに、児童又は生徒の健全な教養を育成すること」とあります。

文部科学省では平成19年から「子どもの『読む・調べる』習慣の確立に向けた実践研究事業」を開始し、子どもの読書活動や学校図書館の活動に関する広報啓発を行うとともに、学校図書館の今後の発展の方向性を探ることを目的として、平成19年6月「子ども読書サポーターズ会議」を設置し、平成21年3月「これからの学校図書館の活用の在り方等(報告)」を出しました。この報告では学校図書館は

  1. 児童生徒の「読書センター」及び「学習・情報センター」としての機能
  2. 教員の授業改善や資質向上のための支援機能(教員のサポート機能)
  3. その他、子供たちの「居場所」の提供や家庭・地域における読書活動の支援を行う機能

という多様な機能を発揮しているとしています。

また平成25年8月から「学校図書館担当職員の役割及びその資質の向上に関する調査研究協力者会議」を開催し、「これからの学校図書館担当職員に求められる役割・職務及びその資質能力の向上方策等について(報告)」を出しました。そして、この報告を受けて、平成27年、リーフレット「みんなで使おう!学校図書館 学校図書館の整備充実に係る基本的な考え方をご紹介します。」を発行しました。その中では、学校図書館の役割を大きく3つに分けて示しました。

※「みんなで使おう!学校図書館 学校図書館の整備充実に係る基本的な考え方をご紹介します。」より

※「みんなで使おう!学校図書館 学校図書館の整備充実に係る基本的な考え方をご紹介します。」より

1.読書センター 

読書活動の拠点となること。

2.学習センター 

授業に役立つ資料を備え学習支援を行うこと。

3.情報センター

情報活用能力を育むこと。

学校図書館がこの3つの役割を果たすことで、「確かな学力、豊かな人間性」「情報活用能力」「思考力・判断能力・表現力」を育み、さらに言語活動、読書活動の充実を通じた教員の指導力の向上に寄与し、子どもの心の居場所ともなることが期待されていることがわかります。

学習指導要領にも、学校図書館に関する記述があります。文部科学省は平成20年に小・中学校の学習指導要領及び幼稚園教育要領を、平成21年に高等学校・特別支援学校の学習指導要領を改訂しました。この学習指導要領改訂のポイントで、「各教科等で記録、説明、批評、論述、討論などの」言語活動の充実を、教育内容の改善事項と挙げています。また総則第4 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項2(10)では「学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り、児童の主体的、意欲的な学習活動や読書活動を充実すること」と記述されています。各教科でも学校図書館の利活用が記述されています。(幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領等の改訂のポイントより)

このような学校図書館の役割が十分に発揮されるためには、資料の充実とともに、学校図書館に関わる人が重要です。先の「これからの学校図書館担当職員に求められる役割・職務及びその資質能力の向上方策等について(報告)」では学校図書館の運営に関わる主な関係者として、校長等の管理職、司書教諭や一般の教員教諭等、学校図書館担当職員、教育委員会等が、「それぞれの立場で求められている役割を果たしたうえで、互いに連携・協力し、組織的に取り組むことが重要である」と述べています。

学校図書館の人材の充実と活性化

平成9年の学校図書館法改正では、平成15年3月31日以降12学級以上の学校には司書教諭を発令することが義務付けされました。しかし、司書教諭が学級担任と兼務で、学校図書館のために時間を取ることができない実態が多くありました。一方、地方自治体では独自の努力で学校司書を配置する取組みが拡大していきました。

このような実態を踏まえて、平成24年には第4次学校図書館図書整備5カ年計画と共に、学校図書館に関する業務を担当する職員の配置のために単年度で約150億円の財政措置が講じられました。学校図書館における人的充実の必要性が強く認識され、平成25年「学校図書館担当職員の役割及びその資質の向上に関する調査研究協力者会議」が組織され、平成26年3月には「これからの学校図書館担当職員に求められる役割・職務及びその資質能力の向上方策等について(報告)」が公表されました。学校図書館に、司書教諭に加えて学校司書の必要性、学校司書の役割や、その役割を担っていくためには学校図書館の運営・管理と児童生徒に対する教育との両面に関する知識や技能が必要と報告されました。

司書教諭と学校司書の違い

  資格 役割
司書教諭 大学等で5科目10単位(学校経営と学校図書館、学校図書館メディアの構成、学習指導と学校図書館、読書と豊かな人間性、情報メディアの活用)の司書教諭の講習を修了する。 ○学校図書館の経営に関する統括
○学校経営方針・計画に基づいた学校図書館を活用した教育活動の企画・実施
○年間読書指導計画・年間情報活用指導計画の立案等
○学校図書館を活用した授業を実践
○学校図書館を活用した教育指導法や情報活用能力の育成等について他の教員に助言する
学校司書 資格は定められていない。 ○学校図書館を運営していくために必要な専門的・技術的職務に従事
○学校図書館を活用した授業やその他の教育活動を司書教諭や教員と共に進める
○図書館資料とその利活用に関する専門的知識等に基づき、必要な支援を行う

つづく平成26年の学校図書館法の一部改正では、専ら学校図書館の職務に従事する職員を「学校司書」とし、司書教諭の他に学校に配置することを努力義務としました。平成26年度「学校図書館の現状に関する調査」結果では、12学級以上の学校の司書教諭の発令は小学校98.4%、中学校97.2%、高等学校93.0%です。一方、学校司書の配置は小学校54.4%、中学校53.1%、高等学校64.4%でした。

同法第6条2では、国及び地方公共団体は、学校司書の資質の向上を図るための研修等、必要な措置を行うこと、ともしました。国は、「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議」を立ち上げ、審議検討、時代の進展や状況変化を踏まえて、学校図書館の運営上の重要な事項や学校司書の資格・養成等の在り方を検討し、取りまとめる予定です。上記協力者会議の配布資料として公表された「学校図書館の整備充実に係るこれまでの意見を踏まえた論点整理案(修正案)」では、学校司書としての資格の在り方、その養成の在り方等を

●学校司書には、学校図書館の「運営・管理」に関する職務に携わるための知識・技能と児童生徒に対する「教育」に関する職務に携わるための知識・技能が必要。
このような学校司書の資質能力は、採用時や配置換え時の資格の確認のみによって確保することには限界があり、現職研修との組み合わせで伸ばしていくことが必要。

●学校司書については、独自の新資格を求める意見がある一方、早急に新資格を創設することは現実的ではなく、また、学校司書の配置は地方自治体や私立学校の自主的な取組により進んで来た経緯があること等に配慮すべきとの意見がある。

としています。

また、上記協力者会議に中に「学校司書の資格・養成等に関する作業部会」を設置し、「学校司書の資格・養成等の在り方について(案)」を検討し、(1)学校図書館の運営・管理・サービスに関する科目と、(2)児童生徒に対する教育支援に関する科目から構成する大学等のモデルカリキュラムを作成しようとしています。

  科目名 司書
教諭
司書 教職
課程
単位数
学校図書館の運営・管理・サービスに関する科目 学校経営と学校図書館     2
図書館情報技術論     2
図書館情報資源概論     2
情報資源組織論     2
情報資源組織演習     2
学校図書館サービス論       2
学校図書館情報サービス論       2
児童生徒に対する教育支援に関する科目 教職に関する科目
ただし、以下の内容を含む必要がある。
・教育の基礎理論に関する科目のうち、教育の理念並びに教育に関する歴史及び思想を含む科目
(例:教育原理等)
・教育の基礎理論に関する科目のうち、幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程を含む科目
(例:教育心理等)
・教育課程及び指導法に関する科目のうち、教育課程の意義及び編成の方法を含む科目
(例:教育課程論等)
    6
学習指導と学校図書館     2
読書と豊かな人間性     2
(計24単位)
(学校司書の資格・養成等に関する作業部会(第3回)配布資料3 学校司書の資格・養成等の在り方について(案) 別紙学校司書のモデルカリキュラムより)

これからの学校図書館

これからの学校図書館は、読書活動の推進のための利活用に加えて、言語活動や探究的学習の場となり、情報を収集・選択・活用する能力を育成する場として、学校教育に重要な役割を担っていきます。近年、百科事典や図鑑などのCD-ROM版、新聞記事のデータベース、小学校英語の音声教材、理科の動画教材などが学校教育の中で活用されるようになってきました。これらのデジタル媒体の資料やネットを介して得られる情報コンテンツなども、これからは学校図書館の資料として含まれるようになります。学校図書館の情報化を進め、ICTと学校図書館の活用を併用していく取組みが、学校図書館の充実と活性化の要となるでしょう。

公立学校における物的整備の状況 蔵書をデータベース化している割合 学校図書館に児童生徒が使用可能なPCを整備している学校の割合
小学校 71.6% 39.6%
中学校 69.9% 37.9%
高等学校 90.5% 66.8%
(平成26年度「学校図書館の現状に関する調査」結果について(概要)から作成)

PCについては、図書館内にあるPCが蔵書検索、貸出、返却のみに使用されている場合と、インターネット上の他の情報を活用できる状態の学校とがあり、ICTの活用に差があることを注意しなければなりません。近年、タブレットPCを用いて、学校図書館において図書とインターネットの両方を活用し、かつタブレットPCでまとめや発表資料を作成するという事例報告も見られるようになりました。このような環境整備、蔵書整備、人材配置は、何といっても導入費用がかかりますが、「市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略」に学校図書館の充実を盛り込んだ自治体が11市区町村ありました。(社団法人全国学校図書館協議会の悉皆調査より)

まとめ

先の「学校図書館の整備充実に関する審議まとめ」(素案)には、「学校図書館の活用を通じて、適切かつ主体的に情報を活用する能力とともに、推論する力や課題解決能力などの教科横断的で基盤的な力を育成することが期待されている」とあります。

学びの場.com「授業実践リポート」では、読書を楽しみながら、推論する力や課題解決能力を育成する理科読の特別授業を詳しくリポートしていますので、是非ご覧ください。

 

 

構成・文:内田洋行ユビキタスライブラリー部 土井美香子

 

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