内田洋行教育総合研究所と学研教育総合研究所が考える
「思考力・判断力・表現力」を構成する能力のタキソノミー

背 景

 内田洋行教育総合研究所と学研教育総合研究所は,次期学習指導要領で求められている「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて,アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善に資する学習環境や指導法について,調査研究を進めてきました。「主体的・対話的で深い学び」に関連する学習活動の実施状況や使用されている教材・教具,実施の課題を整理する中で,「主体的・対話的で深い学び」の実現によって育成しようとする「思考力・判断力・表現力」の概念を具体化する議論を重ね,「思考力・判断力・表現力」を構成する能力のタキソノミー(分類体系)を開発いたしました。

「思考力・判断力・表現力」を構成する能力のタキソノミーとは

 「思考力・判断力・表現力」を構成する能力のタキソノミーとは,「主体的・対話的で深い学び」によって育成される「思考力・判断力・表現力」について,小中学校段階を対象としてより具体的な能力に分解し,提示するものです。

「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」をはじめとして,キー・コンピテンシーや21世紀型スキル等における概念の精査・整理を通して,7つの「能力」として表現しました。

  1. 問題を発見する力
  2. 情報を収集する力
  3. 情報を分析する力
  4. 情報を活用する力
  5. 論理的に思考・判断する力
  6. 創造する力
  7. 情報を伝える力

  「思考力・判断力・表現力」を構成する能力のタキソノミーは,教師が授業設計する際に,「思考力・判断力・表現力」のうち,どのような能力を育成するのか,イメージしやすくなるように支援することを目的としています。

「思考力・判断力・表現力」を構成する能力のタキソノミーの使い方

 このタキソノミーは「思考力・判断力・表現力」を細分化した7つの「能力」と対応する「具体的な力」で構成されています。例えば,「2.情報を収集する力」の中には3つの「具体的な力」が含まれています。授業設計の際には,どの「能力」の,どの「具体的な力」を育成したいかに着目してください。

 なお,全体を見通し,振り返る力である「メタ認知」については,「思考力・判断力・表現力」においても重要な力であると認識していますが,「学びに向かう力・人間性等」に含まれると考え,このタキソノミーでは扱っていません。

ダウンロードはこちら 「思考力・判断力・表現力」を構成する能力のタキソノミー  (PDF 279KB)


1.問題を発見する力

 日常生活から疑問を見つけたり,解決すべき課題として設定したりする力やそのための計画を立てる力のこと。情報化やグローバル化といった社会の変化は加速度を増し,複雑で予測困難となってきている。予測できない変化に受け身で対処するのではなく,主体的に向き合って関わり合い,対象と自らの価値観・経験と照らし合わせ,そこに生じる齟齬や課題に気がつくことができる姿勢が大切になる。

【具体的な力】
(a) 日常生活から疑問を形成することができる
(b) 課題として設定することができる
(c) 解決に向けて仮説を構想することができる
(d) 解決の方向性を決定し,解決方法を見つけることができる


2.情報を収集する力

 多様な情報から目的に応じて,必要かつ信頼できる情報をさまざまな方法を使って効率的に集める力のこと。情報化が進展し,あらゆる分野の情報に触れることが容易になっている。多様な文脈が複雑に入り交じった環境の中でも,場面や状況を理解して自ら目的を設定し,その目的に応じて適切な情報を見いだすことが求められる。

【具体的な力】
(a) 目的に応じて必要な情報を収集することができる
(b) 信頼できる情報を収集することができる
(c) 多様な情報源から収集することができる


3.情報を分析する力

 情報を的確に理解し,多面的・多角的に精査し,目的に沿って分解・整理する力のこと。収集した情報は,順序立てたり関係づけたりすることで,意味づけされ,役立つ情報となる。次項の「4.情報を活用する力」と併せて重要な力と言える。また,分析する手法の習得も必要である。

【具体的な力】
(a) 情報を比較したり,分類したり,関連付けたり,視点を変えたりすることができる
(b) 情報の傾向を読み取ることができる
(c) 情報を構造化することができる(内容の補足・精緻化,論理の構築,妥当性・信頼性の吟味)


4.情報を活用する力

 既存の知識や収集・分析した情報を異なる文脈に当てはめたり,自分の考えを形成したり,判断・選択したりできる力のこと。21世紀は,新しい知識・情報・技術が社会のあらゆる領域で活動の基盤として重要性を増す「知識基盤社会」の時代であるといわれている。未知の課題に対して試行錯誤しながら対応していくことが必要となるが,そのためには,自らが知りうる情報をもとに深く考え,判断していく力が求められる。

【具体的な力】
(a) 情報をもとに自分の考えを形成することができる
(b) 情報をもとに判断・選択することができる


5.論理的に思考・判断する力

 様々な情報を客観的に解釈し,演繹(理論を組み合わせて新たな理論を導き出すこと)や帰納(様々な事実をもとに理論づけること),類推(似た事象をもとに理解すること),仮説推論(仮説を立てて考えること)等の方法を用いて,結論を導き出す力のこと。その際,与えられた情報を無批判に受け入れるのではなく,その情報について多様な観点から考察する批判的思考力(クリティカルシンキング)を働かせることで,より良い考えに到達することができる。

【具体的な力】
(a) 根拠に基づいて,意見や結論を導き出すことができる
(b) 特色や相互の関連,意味を多面的・多角的に考えることができる
(c) 既習の内容と結びつけ,統合的・発展的に考えることができる
(d) 与えられた条件をもとに,より妥当な考えを創り出すことができる
(e) 事実と意見を区別することができる


6.創造する力

 自らの経験や知識,考えや思いなどをもとに,価値を生み出す力のこと。このとき創造されるものは,例えば新しい考えやアイデアなど,自分の内面に留まっているものも含まれる(考えやアイデアを外化し,表現する力は「7.情報を伝える力」に相当する)。価値ある独創的な考えやアイデアは,ひらめきや直感だけではなく,試行錯誤等を通じて考えを具体化していくプロセスを通じて生み出されることが多い。能力を育成する観点からは,創造するプロセスの習得こそが求められる。

【具体的な力】
(a) 物事を異なる見方で考えたり,経験や知識を探索的に組み合わせたりして,新しい考えを構築することができる
(b) 思いや考えをもとに,意味や価値を新たに見いだすことができる


7.情報を伝える力

 他者に対して,自らの考えや意見等を伝える能力のこと。他者に情報を伝える際には,正確に伝えるだけでなく,相手や状況,伝えたい内容に応じて表現を工夫し,わかりやすく伝えることが求められる。このような力は,他人との会話のような双方向のコミュニケーションに加えて,プレゼンテーションのような多数の聴衆に対して行われるコミュニケーションにも活用される。

【具体的な力】
(a) 自分の考えや意見を伝えることができる
(b) 情報を正確に伝えることができる
(c) 根拠や理由を明確にして伝えることができる
(d) 相手・状況に応じて表現を工夫することができる
(e) 伝えたい内容に応じて表現を工夫することができる