意外と知らない"高等学校の多様化"(第2回)

中学校卒業後のいろいろな進学先

 

普通科の高等学校は、大学入試の準備のための教育に偏りがちになるのに対して、職業学科の高等学校は、将来の職業に対する目的意識を持たせる教育を通じて、主体性や自立心が育まれ、卒業者に対する産業界からの評価が比較的高くなっていると言われています。しかし、普通科以外のイメージがわかない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
第2回は、専門高校や高等専修学校(専修学校高等課程)、高等専門学校(高専)について紹介します。

●専門高校ってどんな学校?

専門高校とは、高等学校のうち「職業学科」と呼ばれる、農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉の職業に関する専門学科を置く高等学校のことです。2017年5月現在、専門高校の生徒数は約60万人であり、国内にある高等学校の生徒数全体の、18.4パーセントを占めています。

高等学校学科別生徒数・学校数(2017年5月)
区分 生徒数
(人)
比率
(%)
当該学科を置く
学校数(延べ数)
単独学科
学校数
合計 3,270,400 6,697 3,520
職業学科
(専門高校)
小計 601,354 18.4 1,993 599
農業 81,310 2.5 303 126
工業 249,930 7.6 531 268
商業 195,190 6.0 623 172
水産 9,027 0.3 41 21
家庭 39,924 1.2 274 5
看護 14,194 0.4 96 6
情報 3,010 0.1 28 -
福祉 8,769 0.3 97 1
普通科 2,388,509 73.0 3,770 2,611
その他専門学科 105,008 3.2 565 39
総合学科 175,529 5.4 369 271
※全日制・定時制のみの統計である(通信制は含まれない)。
※「当該学科を置く学校数」欄は、複数学科を置く学校について、それぞれの学科に計上した延べ数である。
「高等学校学科別生徒数・学校数」より転載 blank
 
「都立専門高校の生徒の学習と進路に関する調査」によると、専門高校は普通科高校よりも「積極的に入学した割合が高い」「きめ細やかで実践的な授業が多い」「勉強への積極性が高い」という調査結果が出ています。専門高校では、普通科高校で学ぶ国語や数学等の授業に加えて、各学科に応じた専門科目の授業がありますが、専門科目の授業には実験や実習が多く取り入れられ、体験を通して学習するように工夫されています。下の看護学科のカリキュラム例にも実習が多く取り入れられています。

また体験学習には、例えば「映画制作」「環境問題」「ロボット製作」等、生徒の興味関心に応じたテーマを設定して研究し発表する「課題研究」や、「職業教育」があり、多様な学びで専門的知識・技術を高めることができます。
では、「職業教育」とはどのような事を行っているのか、専門高校における職業教育の実践例を1つ紹介します。

■体験的な学習や地域企業と連携を図った現場での長期間の実習等、実践的な教育活動を積極的に実施している事例

≫ 概要
東京都立六郷工科高等学校では、産業界と高等学校とのパートナーシップを深め、協同して人材育成を行う職業教育を行っています。ものづくり企業での就業訓練を長期間行い、これが学校外における学修として単位認定されます。企業と生徒の双方が合意した場合、卒業後にその企業へ就職することも可能です。

≫ 効果

  • 生徒に勤労観・職業観が身につき、進路決定が積極的になった。
  • 生徒に実践的な技能・技術が身につくとともに、学校での基礎的な学習の大切さに気づいた。
  • 企業は、生徒を受け入れることで職場に活気が出るとともに、受入れのための研修により、社員の能力向上につながった。
  • 採用時におけるミスマッチが少なくなり、早期離職を回避できた。

今後急速に進んでいくと考えられる技術革新、国際化、情報化、少子高齢化等の社会の変化や産業の動向等に対応した教育内容の見直しを行い、個性を育てる教育を行う高等学校が増えてきています。これまで有為な職業人の育成等の面で重要な役割を果たしてきた専門高校では、特に個人の創造性が重視され始めています。

次に、専門高校を卒業した後の進路について、学科ごとの特色を見ていきましょう。

●専門高校卒業後の進路は?

下の図から、普通科高校では進学する生徒が約85%であるのに対し、専門高校では就職の割合が53.1%と高くなっていることがわかります。また、学科によって卒業生の進路は大きく異なります。
※就職者には就職進学者は含まれない。 
 
専門高校に通う生徒は、さまざまな検定試験や発表・競技大会などの各種大会に積極的に取り組んでいるためか、多くの生徒が、取得した資格や実践的な学びを活かして、希望する職業に就いているようです。就職者の業種内訳については、例えば生徒数が最も多い工業科において、製造業が55.8%と最も多く、次に建設業(16.0%)、各種サービス業(8.4%)と続きます。
また、近年は就職率だけではなく進学率も注目されており、大学や専修学校等へ進学する生徒の割合は緩やかな上昇傾向が続いています。下の図「普通科・職業学科別大学等進学率の推移」を見ると、普通科だけでなく、職業学科(専門高校)についても大学等への進学率が上昇していることがわかります。

●高等専修学校(専修学校高等課程)ってどんな学校?

中学校卒業後のもう一つの進路としては、「高等専修学校」があります。高等専修学校は、1976年に新しい学校制度としてつくられた専修学校のうち、中学校卒業者を対象とした課程のことを言います。高等学校と同様の中等教育機関として多様な教育を行っていますが、高等専修学校は高等学校や大学と同じ種類の「学校」とは位置付けられておらず、「専修学校」と位置付けられています。2018年現在、高等課程を置く専修学校は412校あります。

また、高等専修学校は、職業に直結する知識や技術と、社会に出てから必要な教養を身に付けられる教育機関であり、さまざまな職業に必要な知識を身につける専門科目を中心に勉強します。学んだ知識や技能を活かした就職、進学等、幅広い進路へのステップになるという強みもあります。

・高等専修学校と高等学校の違い
高等専修学校には、どのような特徴があるのでしょうか。高等専修学校と高等学校を比較して、詳しく見てみましょう。

  高等専修学校 高等学校
修業年限 1年以上 全日制:3年  定時制・通信制:3年以上
種類
  • 卒業後に大学入学資格が得られる「大学入学資格付与校」
  • 高等学校とのダブルスクールで学べる「技能連携校」
  • そのほか、さまざまな学校
  • 主に普通教科を学ぶ「普通科」
  • 主に普通教科と1つの分野の専門教科を学ぶ「専門学科」
  • 普通教科と専門教科のさまざまな科目の中から選んで幅広く学ぶ「総合学科」
教科・科目 学校ごとに異なるが、一般的に、
  • 目指す職業分野の知識や技能を学ぶ専門科目が中心
  • 授業は、座学だけでなく、実習・実技に多くの時間が割り振られる。
※大学入学資格付与校では、卒業までに、普通科目も420時間(12単位)以上学ぶ。
(卒業までの総授業時間数は、2590時間(74単位)以上(普通科目を含む))。
普通教科:
国語、地理歴史、公民、数学、理科、保健体育、芸術、外国語、家庭、情報
※普通科では、これらの教科を中心に、卒業までに74単位以上を修得。
※専門学科では、必修科目として、これらの教科から最低31単位を修得。

専門教科:
農業、工業、商業、水産等
※専門学科では、卒業に必要な単位(74単位)のうち、専門教科から25単位以上を修得。

●高等専門学校(高専)ってどんな学校?

上に述べた高等専修学校だけでなく、「高専」と呼ばれる高等専門学校もあります。高専は、全国に57校(国立51校、公立3校、私立3校)あり、中学校卒業後5年間の一貫教育で、実験や実習を重視した専門教育を行っています。
高専の特徴の1つに、全国規模の「ロボットコンテスト」や「プログラミングコンテスト」等、生徒が日頃学んだ成果を競う大会が開催されていることが挙げられます。特に、近年テレビ放送されているロボット競技「高専ロボコン」や、人工知能(AI)、ディープラーニング(深層学習)において高専生の能力が注目されています。時代が求める人材を次々と輩出している高専は、卒業後に進学する生徒が増えてきたことから、さらに注目度が高まっています。

では、一つ前でご紹介した「高等専修学校」とはどのような違いがあるのか、比較してみましょう。

種別 高等専修学校 高等専門学校(高専)
入学資格 中学校卒業 中学校卒業
修業年限 大半が1~3年 5年(一部5.5年)
教育水準 中等教育後期(ISCED Level3) 高等教育(ISCED Level5)
学校種類 専修学校 学校
目的 職業・生活能力の育成、教養の向上 深く専門の学芸を教授・職業能力の育成
学習内容 職業等に関する内容 工業や商船等の専門的内容
学位 なし なし
称号 なし 準学士
高卒資格 なし(技能連携制度で定時制・通信制高校を
卒業する等すればあり)
3年次修了が条件
大学進学 修業年限3年等、一定条件の学科修了で入学可能 卒業後編入学可能
※編入学とは途中の年次から入学すること
卒業後の進路 就職54.4%(残りは進学等) 就職57.3%(残りは進学等)
(注)進路は、高専は2017年3月卒業者、専修学校は2016年度間修了者について

高等専修学校と高等専門学校(高専)はともに職業に関する能力を育成するという点は共通していますが、学ぶ分野に違いがあることがわかりますね。高専は5年間(商船系学科は5年半)在学し、卒業に必要な単位を取得すると高校卒業の資格が取得できます。さらに得意な分野の勉強のみで国立大学2~3年次への編入試験を受けられることがポイントです。一方、高等専修学校を卒業するだけでは、高校卒業資格は取得できません。
高専は、5年の間に大学受験をせずに高校卒業以上の資格が取得できるため、部活動や趣味に打ち込むことができることも魅力的ではないでしょうか。

いかがでしたか。第2回は、専門高校や高等専修学校(専修学校高等課程)、高等専門学校(高専)について紹介しました。第3回は、高等学校の課題に対する、先進的な専門高校の事例について紹介します。

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 加藤紗夕理

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