意外と知らない"教員免許"(第1回)

「学校の先生」になるためには、原則として①教員免許を取得し、②教員採用試験(私立学校の場合は学校法人の試験)に合格する、という二つのステップを踏まなければなりません。今回は「教員免許の取得」に焦点を絞り、2回に渡って「大学の教職課程を履修して取得する方法」と、「社会人になってから免許取得を目指す方法」について紹介します。第1回は、教員免許の種類や、2019年度より新しくなった大学の教職課程についてご紹介します。

教職員採用倍率の低下

近年、教員採用試験の倍率低下が話題になっています。10倍を超えていた20年ほど前と比べ2019年度試験では4.2倍(小学校に限定すれば2.8倍)まで落ち込みました。
昨夏実施された教員採用試験について、教育新聞が以下のように報じています。
2019年夏に実施された2020年度(2019年度実施)公立学校教員採用試験の1次選考実施状況を本紙調べで集計した。全国66県市のうち、半数以上の県市で1次選考合格倍率(総受験者数÷総合格者数)が下がった。前年より大幅に低下したのは福島県(今年2.4倍、△0.9ポイント)、鹿児島県(2.1倍、△0.9ポイント)、川崎市(1.7倍、△0.6ポイント)、兵庫県(3.1倍、△0.6ポイント)、横浜市(1.3倍、△0.6ポイント)、宮城県(1.9倍、△0.5ポイント)など。(中略)約7割の県市で倍率が低下した昨年度に引き続き、3年連続で低下した形だ。(教育新聞 2019年9月16日)
倍率低下の原因については様々な議論がなされており、景気が良好で民間就活が「売り手市場」な点だけでなく、「意外と知らない"教員の働き方改革"」でもお伝えしたように、教員の長時間労働問題等の「学校=ブラック職場」というイメージが広がっていることが原因であるという考え方もあります。
しかし、団塊世代の大量退職で採用者数が大幅に増加していることも忘れてはなりません。過去40年間の教員採用試験採用者数と倍率を表している図1をご覧ください。もっとも採用者数の少なかった2000年(11,021人)と比べ、2019年の採用者数は約3倍(34,952人)となっていることが分かります。
 
採用者数が少なく、倍率が高かった20年ほど前と比べ、今が先生になるチャンス!と考えている社会人の方、「将来先生になりたい!」というお子さんを持つ保護者の方、先生をサポートする仕事・ボランティア活動をしたいと考えている方などに向けて、教員免許について紹介したいと思います。

教員免許の種類

学校で教壇に立つには、基本的にはいずれかの都道府県教育委員会が発行した教員免許(教育職員免許状)が必要です。
教員の免許状は、表1のように普通免許状、特別免許状、臨時免許状の3つに大きく分けられます。
 

・普通免許状

普通免許状は、学位と大学等での単位の修得により、授与される免許状です。必要な学位と教職課程の単位数の違いにより、①専修免許状(修士課程修了程度)、②一種免許状(大学卒業程度)、③二種免許状(短大卒業程度)の3種類に分かれています。(高等学校の免許状には二種免許状がないため、短大では取得できません。)
有効期間が10年ですが、30時間以上の講習を受けることで、更新できます。

また、免許は幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校といった学校種ごとにも異なっており、さらに、中学校、高等学校の免許は表2のように教科ごとに分かれています。各学校の教員は、原則として、その学校種に対応した教員免許状が必要になりますが、中学校や高等学校の免許状を持っていれば、 小学校で所有免許状の教科に相当する教科の担任や、総合的な学習の時間における所有免許状の教科に関する事項の担任が可能となっています。
 
学校種 教科・領域等
幼稚園
小学校
中学校 国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、保健、技術、家庭、 職業、職業指導、職業実習、外国語(英語、ドイツ語等) 、宗教
高等学校
(二種免許状なし)
国語、地理歴史、公民、数学、理科、音楽、美術、工芸、書道、保健 体育、保健、看護、看護実習、家庭、家庭実習、情報、情報実習、農業、農業実習、工業、工業実習、商業、商業実習、水産、水産実習、 福祉、福祉実習、商船、商船実習、職業指導、外国語(英語、ドイツ語等)、宗教
特別支援学校 視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者、病弱者
まとめると普通免許状は、以下のようになります。
① 学位と大学等での単位により、専修・一種・二種に分かれている。
② 学校の種類により、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校に分かれている。
③ 中学校・高等学校については、さらに教科等により分かれている。

例えば、
短大で小学校免許を取ると、小学校二種
4年制大学で中学校国語の免許を取ると、中学校一種(国語)
修士課程で高校数学の免許を取ると、高等学校専修(数学)
という免許が取得できます。

また、児童の養護をつかさどる教員、児童の栄養の指導及び管理をつかさどる教員は、それぞれ養護教諭(養護助教諭)の免許状、栄養教諭の免許状が必要になります。なお、司書教諭は教員免許とは異なる「資格」なので免許状はありません。
大学卒業後に、上位の免許状や他の種類の免許状を取得しようとする場合は、長期休暇や週末に教育委員会や大学が実施している認定講習を受けて、必要な単位を取得します。例えば、4年制大学で中学校国語の免許を取得し、3年教員として勤務した先生が、特別支援学級の担任になったので専門性を高めようと思い、特別支援学校二種の免許状も取得しようとする場合、6単位(2日間の講習で1単位。4ヶ月間の通信教育で2単位。等)の修得が必要です。
 

・特別免許状と臨時免許状

普通免許状がすべての都道府県で有効なのに対し、特別免許状と臨時免許状は、授与を受けた都道府県内のみで有効となります。
特別免許状は、免許状を持っていないが、優れた知識経験を有する社会人を学校現場へ迎え入れるため授与される免許状です。授与条件としては、担当教科に関する専門的な知識経験や技能を有することなどがあり、教育職員検定(都道府県教育委員会による書面審査等)を経て授与されます。
臨時免許状は、病気や産休などで欠員が生じた場合など普通免許状を有する者を採用できない場合に限り、例外的に授与される助教諭の免許状です。こちらも教育職員検定を経て授与されます。
特別免許状については、本連載の第2回で詳しく紹介したいと思います。
3種類の免許状の中では普通免許状が最も授与件数が多く、ほとんどの教員は普通免許状を所持しています。
では、教員免許はどのようにして取得するのでしょうか。大学で取得する場合について見てみましょう。

教員免許の取得ができる大学

教諭の普通免許状を取得するためには、原則として大学等の教職課程の単位を修得する必要があります。
教員養成は、文部科学大臣による教員免許課程としての認定を受けた一般学部と、特定学部である教員養成学部とが、それぞれの特色を発揮しながら行っています。
教員養成学部では、学校教育に関連する科目が多く開設されており、幼稚園教諭、小学校教諭、中学校教諭、高等学校教諭など修得単位や所属コースにより、様々な免許状を同時に取得することができます。(教員養成学部教員養成課程では、免許状の取得が卒業の要件となっています。)
その他の学部では、学問的な専門性を活かした免許状(主に中学校、高等学校の免許状)を取得することができます(例:法学部で中学校社会、高等学校公民、理学部で中学校理科、高等学校理科 等)。教職課程のある大学でも、入学した学科によっては教職課程自体が無かったり、取得したい種類の免許状を取得できないこともあるので、入学する前に確認する必要があります。教員を目指される方は文部科学省のサイト blank等で調べてみてください。県内に1~2校だけということも少なくありません。そのような県の学校では、同僚の先生の半分以上が大学の先輩・後輩ということもあります。

また、高度専門職業人としての教員に求められる高度な実践力・応用力を育成するための教員養成分野における専門職大学院として、2008年に教職大学院が設置されました。一種免許状を持つ多くの現職教員の方が教職大学院に通い、「専修免許状」にステップアップしています。
では、大学では実際にどのようなことを学ぶのでしょうか。

教職課程

教員免許取得のために履修が必要になる科目は、教育職員免許法および同法施行規則改正の2019年4月1日の施行に伴い、約20年ぶりに変更されました。それぞれの科目で必ず修得すべき内容・達成すべき基準については、2017年に「教職課程コアカリキュラム」として公表されました。
「必要単位数が法律に規定され、新たな教育課題が生じても速やかに単位数を変更するのは難しい」「学校現場の状況の変化や教育を巡る環境の変化に対応した教職課程になっていない」「大学教員の研究的関心に偏った授業の傾向が強く、教員として必要な学修が行われていない」といった批判を受け、文部科学省では、教職課程で履修すべき事項を全面的に見直し、教科の専門的内容と指導法を一体的に学べるよう、教職課程の科目区分を大括り化し、学校現場で必要とされる知識や技能を養成課程で獲得できるよう教職課程の内容を充実させています。
今回の変更で、「小学校の外国語(英語)教育」「ICTを用いた指導法」「特別支援教育の充実」「学校安全への対応」「道徳教育の充実」「アクティブ・ラーニングの視点に立った授業改善」「学校と地域との連携」「チーム学校運営への対応」「学校体験活動」等、2020年度より順次施行される新学習指導要領に基づく内容等が多く加えられました。教員免許をお持ちの方は、是非自分が履修した科目からの変化を図2から見つけてみてください。
 
上記の科目に加えて、小・中学校の普通免許状取得希望者には7日間以上の「介護等の体験」が義務付けられています。これは「義務教育に従事する教員が個人の尊厳及び社会連帯の理念に関する認識を深める」という制定趣旨とともに、7日間の内訳は社会福祉施設等で5日間、特別支援学校で2日間とすることが望ましいことが事務次官通達で示されています。筆者は、小学校、中学校、高等学校の3種類の免許状を持っていますが、大学在学時に公立小学校で4週間、附属中学校で3週間の教育実習の他に、7日間の「介護等の体験」を行い、特別支援学校で2日間、児童生徒と勉強や運動、掃除をしたり、ご飯を食べたりしました。また特別養護老人ホームへ5日間行き、体を動かしたり、将棋をしたり、多くの入居者の方と交流を深めました。(内容は体験に行く施設によって異なります。)

第1回は教員免許の種類、「大学での教職課程履修を通して取得する方法」についてご紹介しました。第2回は、「社会人から免許取得を目指す方法」について紹介します。
 
 
 

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 秋野光哉

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