意外と知らない"教員免許"(第2回)

「学校の先生」を目指す方へ、教員免許取得についてご紹介している今回の教育ウォッチ。第1回では、教員免許の種類や、「大学での教職課程履修を通して取得する方法」についてご紹介しました。第2回では、社会人になってからやっぱり「学校の先生」になりたいという方に、「社会人から免許取得を目指す方法」について紹介します。

社会人からの採用が求められている

第1回でご紹介した教員採用試験倍率の低下、国際化・情報化に対応できるスキルを持つ教員の不足などの背景もあり、中央教育審議会の教員養成部会においても、民間企業出身者の採用の増加策が検討されています。我が国の教員採用者に占める、民間企業出身者の採用割合はどのくらいなのでしょうか。表1は、2019年度の採用者が、どのような前職に就いていたのかを表しています。社会人採用の大部分は臨時的任用教員等の教職経験者で、民間企業での勤務経験のある採用者の割合は4.0%と決して多くはありません。なお残りの42.9%は、新卒者など前職の無い採用者です。

大学卒業後に教員を目指すとき、教員免許を既に取得しており、免許が有効期間内(2009年3月以前に取得した場合は有効期間の定め無し)であればでは、教員採用試験を受けることができます。しかし免許を授与されていない場合は、まずその取得をしなければなりません。では、大学を卒業後に教員免許を取得したい場合、どのような方法があるのでしょうか。

社会人から教員免許(普通免許状)を取得する方法

①通信制大学での取得

社会人になってから教員免許取得を目指す方法の一つが、大学の通信課程での取得です。
2019年7月に開催された第106回中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会の資料には、通信課程での教員養成に実績のある玉川大学、明星大学、聖徳大学と、免許取得者の少ない教科の教員を養成している北海道情報大学と武蔵野美術大学の 5 校での調査結果が載っています。社会人等としての生活を送りながら、あえて自分の決断で、難しいと言われる教員免許状取得に取り組む学生は、20代後半から40代が中心で、通学課程よりも教員志向が極めて高いそうです。すでに卒業した通学課程の大学で免許状を取得していて、専門性を高めたい現職教員の学生もいるそうです。
 
大学 主要な教員免許
玉川大学 幼、小、中(社会、数学)、高(地歴、公民、数学)
明星大学 特支、幼、小、中(国語、社会、美術、英語、数学、音楽、理科) 、高(国語、地歴、公民、美術、英語、 数学、音楽、理科)
聖徳大学 養護、幼、小、中(国語、社会、英語)、高(国語、地歴、公民、書道、英語、福祉)
北海道情報大学 中(数学)、高(商業、数学、情報)
武蔵野美術大学 中(美術)、高(美術、工芸)

表2 通信教育課程を持つ大学と主要な取得可能教員免許例(2019年5月1日)
中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会(第106回)資料.pdf pdfより作成)

通信教育課程で取得できる教員免許の種類は多いですが、3~4週間の教育実習と7日間の介護等体験は、社会人にとって大きな壁になっています。フルタイムで働く社会人にとって、1か月間の休みを取ることは容易ではないでしょう。教育実習を受け入れてくれるところを1人で探すのもなかなか大変です。「教育実習や介護等体験について、単位数・期間の軽減、他の実務やボランティア活動などの置き換え」といった制度上の改革が望まれています。

また、大学で途中まで教職課程を取っていたけれど、卒業までに単位が取りきれず、そのまま卒業してしまったという方も安心してください。卒業までに取得した単位は無効になりません。文科省のQ&Aには以下のようにあります。
 
卒業までに教職課程の単位を取りきれなかったとしても、既に修得した単位は無効になりません。
まずは、大学在学時に教職課程の単位をどれくらい取得できていたか確認してください。卒業した大学に「学力に関する証明書」の発行を依頼し、その書類を基に、現在お住まいの都道府県教育委員会に相談することで確認が可能です。不足している単位については、必ずしも卒業した大学で修得する必要はなく、同じ校種(教科)の教職課程のある別の大学で修得しても構いませんが、特に中・高等学校の「教科に関する科目」については、各区分ごとに、一般的包括的な内容を含む科目を履修することに留意してください。なお、小・中学校の教員免許状を取得したい場合、(1998年度入学者より)7日間以上の介護等体験が必要となります。 (文科省HP 教員免許Q&A 2-3 blankより)
 
先ほど紹介した5校以外にも、教員免許を取ることができる通信課程は多くあります。詳しくは、文部科学省サイトに掲載されている一覧 blankをご覧ください。

②教員資格認定試験

1974年に「大学等で教職課程を取らなかった者で教育者としてふさわしい資質を身に付け,教職を志すに至った者に対し教職への道を開くこと」を目的として創設された試験制度が、独立行政法人教職員支援機構が運営する教員資格認定試験制度です。
下記の二つを満たしていれば受験可能で、大学を卒業していなくても教員になることができます。
  • 高等学校を卒業した者、その他大学(短期大学及び文部科学大臣の指定する教員養成機関を含む。) に入学する資格を有する者
  • 受験年度の 4 月 1 日までに20歳であること

この試験の合格者には、免許管理者である都道府県教育委員会に申請することにより、教諭の普通免許状が授与されます。取得できる免許の種類は、幼稚園教諭二種、小学校教諭二種、特別支援学校自立活動教諭一種の3つです。たとえば、小学校教諭二種の場合の受験科目は以下のようになっており、3段階の試験を受けることになります。
 
受験資格に関しては前述の通りやや低いハードルとなっているように思われます。しかし知名度が低いためか、出願者数は減少傾向にあり、2018年度の受験者は849名、合格者は112人となっています。
なお、受験会場は、小学校教員資格は東京、横浜、静岡、岡山、熊本の5か所(1次試験は仙台でも受験可能)、幼稚園教員資格は東京、大阪の2か所、特別支援教員資格は東京1か所のみです。詳しくは、独立行政法人教職員支援機構のページ blankをご確認ください。

③教職特別課程

教職特別課程とは、1987年12 月の教育職員養成審議会答申における「大学において教職課程をとらなかった者が教員免許状を取得する機会を拡充するため、大学に「教職特別課程」を設置することができるようにする必要がある」という提言を受け、1988年に教育職員免許法を改正し設置されました。
取得できる免許は、中・高の専修免許状及び一種免許状、または特別支援学校教諭の一種免許状であり、現在開設されているのは、今年4月の時点で以下4大学の課程のみとなっています。慶応義塾大学については詳細を紹介した資料「
慶應義塾大学教職特別課程について.pdf pdf」があるので是非ご参考ください。
大学 募集人数 取得可能免許
慶応義塾大学 50名 中一種・専修(国語、社会、数学、理科、英語、ドイツ語、フランス語、中国語)
高一種・専修(国語、地理歴史、公民、数学、理科、英語、工業、商業、ドイツ語、フランス語、中国語、情報)
工学院大学 募集停止 中一種(技術、数学、理科)
高一種(工業・理科・数学・情報)
岡山理科大学 50名 中一種・専修(社会、数学、理科、技術)
高一種・専修(公民、数学、理科、情報、工業)※情報は一種免のみ
琉球大学 10名 特支一種免(知・肢・病)

表5 教職特別課程を持つ大学と取得可能免許
(中央教育審議会 初等中等教育分科会 教員養成部会(106回)「教職特別課程について.pdf pdf」P.2より作成)

それぞれのポイント

①~③まで、社会人からの教員免許取得方法について見てきましたが、ここでそれぞれのポイントを押さえておきましょう。

  通信課程 教員資格認定試験制度 教職特別課程
ポイント 一般大学の教職課程同様にしっかり学べる。 高卒以上且つ20歳以上であれば誰でも受けられる。 1年間の通学課程で免許を取得することができる。
取得可能な免許の種類 少(中・高免許は取得できない) 少(幼・小免許は取得できない)
経済的負担
仕事との両立 困難 不可
学生同士や教員との交流の機会

特別免許

ここまでは教員免許の中でも「普通免許状」の取得についてみてきました。最後に「特別免許状」についても見ていきましょう。
第1回でご紹介した教員免許の種類の中に、「特別免許」がありました。これは、地域や学校の実情に応じて、学校教育の多様化等に対応するため、社会的経験や各種の資格等を有する者を教員として活用することを目的に、1988年の免許法改正により創設されたものです。この免許は、学校種ごとの教諭の免許状であり、小学校は全教科について教科ごとに、中学校は普通免許状と同様の教科、高等学校は普通免許状と同様の教科のほか、文部科学省令で定める教科の領域の一部に係る事項(柔道、剣道、情報技術、インテリア、デザイン、情報処理、計算実務)、特別支援学校は自立教科等について授与することができます。都道府県教育委員会が行う教育職員検定(都道府県教育委員会による書面審査等)に合格した者に授与され、その都道府県でのみ有効となります。
しかし、再三の制度改善により、待遇面や教育活動において普通免許状と実質的に差異が無くなっているにもかかわらず、年間50件程度の授与数とあまり活用が進んでいませんでした。そこで文部科学省は2014年に「特別免許状の授与に係る教育職員検定等に関する指針」を示したほか、2016年度に「特別免許状等の活用に関する事例集」を出し、活用の推進を図っています。
 

「特別免許状等の活用に関する事例集」には、以下のような教員の事例が載っています。

●国際バカロレア教育推進への活用(札幌市立札幌開成中等教育学校・数学)
中学校でのALT、オーストラリアの州政府財務省での保険数理業務などを経て、現職で勤務。現職では、英語・日本語・中国語が理解できる能力を生かし、グローバル教育の推進において活躍。

●オリンピック人材の活用(京都市立嵯峨中学校・保健体育)
日立製作所に入社し、2000年シドニーオリンピックソフトボールの日本代表として、銀メダルを獲得。現役引退後は、全日本のコーチとして2008年の北京オリンピックの金メダル獲得に貢献。その後、教員を目指し、平成23年度京都市教育委員会教員採用試験(保健体育志願者特別選考)に合格することにより任命権者である京都市教育委員会が教育職員検定への推薦を行い、特別免許状の授与を受け、2011年4月より勤務。

●特別支援学校へ専門資格保持者を採用(神奈川県教育委員会)
神奈川県では、県立特別支援学校へ理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・臨床心理士・看護師などの専門職に特別免許状を授与し、自立活動教諭として採用。
 
第2回では、社会人の皆さんが教員免許を取得したいとき、どのような方法があるかをご紹介しました。それぞれの制度にメリット・デメリットがあるので、ご自身にあった教員免許取得の方法を探すための参考になれば幸いです。無事免許取得が叶うよう願っております。
 
 
参考資料

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 秋野光哉

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