意外と知らない"非認知能力"(第2回)学齢期の非認知能力向上の取組

 

世界中で注目されている「非認知能力」。第2回では、児童期~青年期の活動との関わりや、小中学校での非認知能力に関する取組などについて考えてみましょう。

児童期や青年期に非認知能力を伸ばすことはできるの?

非認知能力に関する研究は、就学前の乳幼児期に対して数多く行われています。しかしこれは、脳の発達段階により、非認知能力が最も伸びるのが乳幼児期と言われているためであり、それ以降でも伸ばすことはできるでしょう。小学校から中学校までの義務教育期間や、高校、大学での生活など、社会人になるまでにはさまざまな経験をしたり、多くの人との出会いがあったりしますよね。この期間で身に付けた能力も、その子どもの将来に影響するのではないでしょうか。

第1回で紹介したOECDワーキングペーパーによると、社会情動的スキルは認知的スキルよりも敏感期(ある特定の機能を成長させるため、特別に際立った感受性を持つ時期)が遅く、生涯のうち遅い段階においても変化させることが可能であると言われており、特に10歳から18歳の青年期に良くも悪くも激しく変化するとあります。

加えて、社会情動的スキルと認知的スキルは互いに独立したものではなく、相互にスキルの蓄積を促進しながら育まれていくものと示されています。逆に、いずれか一方に欠けやつまずきがあると、他方のスキルも伸びづらくなります。社会情動的スキルのレベルが高いと、認知的スキル、社会情動的スキルの両方を向上させる効果があることが明らかにされており、粘り強さや自制心をもって学習に取り組むほどより多くの情報を得るなど、社会情動的スキル自体も認知的スキルの発達に密接に関連しているようです。

ベネッセ次世代育成研究所(2013)による調査では、「学びに向かう力」とは、自分の気持ちを言う、相手の意見を聞く、物事に挑戦するなど、自己主張・自己抑制・協調性・好奇心などに関係する力と学びに向かう力の育ちであるとされており、学びに向かう力の育ちと、文字・数・思考の育ちには関連がみられると報告されています。

学力を伸ばすためには、その土台となる力である、認知能力や非認知能力を測って伸ばすのが効果的とも言われています。認知能力や非認知能力の測定方法について、見てみましょう。

どうやって測定するの?

認知能力を測定し、弱い能力を高める方法として、例えば認知機能強化トレーニングの「COGET」があります。認知機能には記憶、知覚、注意、言語理解、判断・推論といった要素が含まれていますが、これは、それぞれの要素を強化するための紙と鉛筆を使ったトレーニングです。

COGETは①覚える、②写す、③見つける、④数える、⑤想像する、の5つのトレーニングから構成されます。例えば、「写す」能力をトレーニングすると漢字を覚えやすくなったり、記憶力や注意力、集中力を鍛えると、計算ミスも減るでしょう。

一方、数値では測れない非認知能力についても、近年は各教育委員会が実施する質問紙調査で問われることがあるようです。どのような質問項目で「非認知能力」を測定し、伸ばそうとしているのか、教育委員会が公表している資料を見てみましょう。

<埼玉県の例>

埼玉県では、平成27年度から「自制心」「自己効力感」「勤勉性」「やりぬく力」の4つの項目について児童生徒に対し質問紙調査を行っています。この取組を、平成30年度から広島県福山市、福島県郡山市、福島県西会津町に拡大しました。平成31年度からは福島県教育委員会と本調査を活用した「義務教育に関する連携協力協定」を締結し、福島県全域で共同実施しています。加えて、宮城県白石市、高知県梼原町などでも調査を実施しています。

以下に、質問項目の例を掲載します。

  • 自制心(自分の意思で感情や欲望をコントロールすることができる力)を問う項目
    ・授業で必要なものを忘れた。
    ・他の子たちが話をしているとき、その子たちのじゃまをした。
    ・机・ロッカー・部屋が散らかっていたので、必要なものを見つけることができなかった。
    ・家や学校で頭にきて人やものにあたった。
  • 自己効力感(自分はそれが実行できるという期待や自信)を問う項目
    ・授業ではよい評価をもらえるだろうと信じている。
    ・授業で教えてもらった基本的なことは理解できたと思う。
    ・先生が出した一番難しい問題も理解できると思う。
    ・授業の難しさ、先生のこと、自分の実力のことを考えれば、自分はこの授業でよくやっているほうだと思う。
  • 勤勉性(やるべきことをきちんとやることができる力)を問う項目
    ・ものごとは楽しみながらがんばってやります。
    ・自分がやるべきことはきちんと関わります。
    ・宿題が終わったとき、ちゃんとできたか何度も確認をします。
    ・何かを始めたら、絶対に終わらせなければいけません。
  • やり抜く力(自分の目標に向かって粘り強く情熱をもって 成し遂げられる力)を問う項目
    ・興味を持っていることや関心のあることは、毎年変わります。
    ・少しの間、ある考えや計画のことで頭がいっぱいになっても、しばらくすると飽きてしまいます。
    ・何事にもがんばる方です。
    ・始めたことは何でも最後までやり遂げます。

このように、学力調査に併せて児童生徒に非認知能力に関する質問を尋ね、教科学力との関連を分析する取り組みが広がっているようです。下記のように、学齢期の非認知能力向上に特化した取組をしている自治体もあります。みなさんが住んでいる地域のホームページにも、非認知能力に関する情報が掲載されていたり、教育委員会独自の取組が行われていたりするかもしれませんね。

埼玉県戸田市の例

埼玉県戸田市では「『世界で活躍できる人間』の育成」を教育目標に掲げ、2016年より全市立小中学校がそれぞれ「非認知能力育成プログラム」を作成しています。特に、実行力、忍耐力、協働・協調性などを発揮できる「やり抜く力」を育てることを目指しています。さらに、2018年度からは、その取り組みの成果を測るためにAIを活用した評価ツール「Ai GROW」を試験的に導入し、どのような取組によってどの力が伸びたかを客観的に検証し、有効と考えられる施策(例えば、共感・傾聴力の育成には、男女間の心理的安全性が確保された状態でグループ活動を行い、意見を否定せず褒め合う。また、教員役や1年生役など、相手の立場になりきる活動が有効と考えられる。など)をまとめたそうです。

兵庫県神戸市の例

兵庫県神戸市では、子どもの非認知能力向上のための動画プログラム 「ダヴィンチマスターズ with KOBE」を動画配信する取組を行っています。この取組は、「社会を生きぬく力」を育てることを目的に、一般社団法人と提携して非認知能力向上のための取り組みを神戸から全国に広げようというものです。
主な対象は小学校低学年であり、動画を見た後に子ども自身が体験活動を行い、さらにステップアッププログラムに参加して子どもが考えを深めるような構成になっています。

<プログラムの内容>
STEP1:動画プログラム「ダヴィンチプログラム」をYouTubeで見る
※子ども向けプログラム後に、保護者向けに非認知能力を伸ばすための専門家によるポイント解説が入っています。
STEP2:お子様自身で体験する「おうちでダヴィンチ」
STEP3:「おうちでダヴィンチ」の結果をメールやSNSで投稿
STEP4:ステップアッププログラム「みんなでダヴィンチ」をYouTubeで見る(参加する)
※「みんなでダヴィンチ」は参加型オンラインプログラムを実施するプログラムも予定

小中学校での取組

文部科学省が掲げている「生きる力」を育てるために、小学校や中学校ではどのような取組が行われているのでしょうか。皆さまの学生時代、またはお子様の学校生活において、非認知能力を培うような活動は何か思い浮かびますか。

児童期~青年期においても、学校やその他の活動などを通して非認知能力を強化する様々な取組があると考えられます。

  • 特別活動(学校行事や学級活動、児童生徒会活動、小学校のクラブ活動)
  • 部活動
  • ボランティア活動
  • 習い事

例えば、「特別活動(学級活動)」の時間では、学級の目標やルールを話し合ったり、仲間と協力して学校行事の準備をしたりすることがあります。これは、学級の仲間と目標に向かって行動したり、人と関わって意見をまとめたりする活動が含まれており、非認知能力に影響すると考えられます。道徳や総合的な学習の時間も自らの生き方・人生について考える力を育成しています。

上記のように、2回にわたって、非認知能力のポイントを解説してきました。非認知能力を育むには幼児期が最も効果的と言われていますが、決して幼児期だけに限られた話ではないと思います。子どもが友達と幅広く触れ合う機会だけでなく、家族で過ごす時間も大切にして、自然と非認知能力を養い、子どもの将来の生き方につながるような力を育むことができるとよいですね。

 

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 加藤 紗夕理

 

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