意外と知らない"GIGAスクール構想"(第1回)

 

皆さんは"GIGAスクール構想"をご存知でしょうか。「多様な子どもたちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が確実に育成できる教育ICT環境を実現し、これまでの教育実践の実績と最先端のICTを組み合わせることで、教師・児童生徒の力を最大限に引き出そう」という構想です。簡単に言うと、学校で「1人1台端末」を活用した学習ができるような環境を整えて活用していこうというもので、GIGAとは「Global and Innovation Gateway for ALL」の略です。新型コロナウイルス感染症の拡大による休校措置に伴い、離れたところにいてもつながることのできるICTを教育で活用することは、今後ますます必要とされてきます。今回はこの「GIGAスクール構想」について紹介します。第1回はGIGAスクール構想全体の概要についてです。

GIGAスクール構想の概要

(1)背景

①学校におけるICT環境の整備実態

今日、世の中の仕事で一切コンピュータを使わない、という仕事はどのくらいあるでしょうか。多くの職場には様々なICT機器が溢れ、それらを使って効率的に業務を行っています。今小中学校に通っている子どもたちが社会人になる頃には、もっとたくさんのICT機器が世の中に溢れているでしょう。また、新しく生まれるIT技術を活用した、これまでになかったような職業も生まれているかもしれません。

一方で、日本の学校の現状はどうでしょうか。「学校における教育の情報化の実態等に関する調査(2019年3月現在)」によると、教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は平均5.4人(小学校6.1人、中学校5.2人、公立高等学校4.4人)。小中学校では5~6人のグループに1台しかコンピュータがありません。さらに、最も多い佐賀県では1.9人に1台整備されているのに対し、最も少ない愛知県では7.5人に1台となっており、地域間での整備状況の差も大きくなっています。

さらに、環境だけでなく利活用の観点からも「学校の授業におけるデジタル機器の利用時間」がOECD加盟国で最下位(OECD生徒の学習到達度調査(PISA2018)「ICT活用調査」より)となっています。

②学校のICT環境整備に係る地方財政措置

なかなか進まないICT環境整備に対し、文部科学省ではこれまでに「2018年度以降の学校におけるICT環境の整備指針」を取りまとめ、この整備指針を踏まえて「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」を策定しています。この中で目標水準とされている「3クラスに1クラス分程度の学習者用コンピュータ(小1~高3)」や「超高速インターネット及び無線LAN100%整備」といった項目に対し、2018~2022年度までの5年間、毎年1,805億円の地方財政措置が講じられています。

なお2019年時点の普通教室の無線LANの整備率は、小学校43.4%、中学校42.2%、公立高等学校29.2%と、高等学校の方が低い状況です。

(2)「GIGAスクール構想の実現」に向けた令和元年度補正予算

こうした状況の中、環境整備を更に加速し“令和の時代における学校の「スタンダード」として「1人1台端末」環境を整備”するために、児童生徒向けの1人1台の端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する経費が令和元年度補正予算として2,318億円計上されました。

児童生徒1人1台端末の整備(1,022億円)

既に地方財政措置が講じられている3クラスに1クラス分を除く3人に2台分、義務教育段階の児童生徒について1台あたり上限額4.5万円、国が補助するというものです。当初のロードマップでは、2020年度中に小5・小6・中1分を、そこから段階的に整備を進めていき、2023年度までかけて4年間で9学年分を整備する計画でした。

校内通信ネットワークの整備(1,296億円)

「1人1台端末が接続可能な校内ネットワーク環境」を整備するための費用を国が1/2補助する、というものです。校内通信ネットワークだけでなく、端末の整備と併せて必要になる電源キャビネットも補助の対象としています。

また、これらの補助金を利用するためには、「1人1台環境」におけるICT活用計画を立てることや、地方財政措置を活用した3クラスに1クラス分の端末を2022年度までに整備することを目指した計画をたてることが措置要件とされています。

(3)新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うGIGAスクール構想の加速(令和2年度補正予算)

①学びの保証のための令和2年度補正予算

こうした動きの一方で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い多くの学校が休校を余儀なくされました。そして学校が休みの間、子どもたちの学習・指導をどのように行い学びの保障をするか、という議論の中でICTを活用した教育(学校と家庭をつなぐオンライン学習など)の必要性が高まってきました。これを受け「GIGAスクール構想の加速による学びの保障パッケージ」として令和2(2020)年度補正予算2,292億円が計上されました。令和元年度補正にあった端末・ネットワークに、スクールサポーター、家庭でのオンライン学習環境の整備が追加されました。

児童生徒の端末整備支援(1962億円)

当初段階的に整備を進める予定であった1人1台端末についての前倒しを支援します。令和元(2019)年度補正で措置済みの小5・小6・中1分に加え、小1~小4・中2・中3分すべてを措置するものです。金額は、令和元年度補正同様、端末1台当たり上限4.5万円です。
さらに、障害のある児童生徒への入出力支援装置(固定具、スイッチ、点字表示装置など)の整備についても措置されています。

学校ネットワーク環境の全校整備(71億円)

光回線が来ていなかった地域など、何らかの理由で令和元年度補正に申請していなかった学校のネットワーク環境の整備について支援するものです。(補助対象・補助率などは令和元年度と同様)光回線の整備については、総務省の補正予算の対象となっています。

GIGAスクールサポーターの配置(105億円)

急速な学校ICT化を進める自治体等を支援するため、導入時のルール作成、環境整備支援など導入当初に必要なICT技術者などの配置経費を支援するものです。ICT支援員(授業における利活用など恒常的に教員の活用を支援する人材)がGIGAスクールサポーターの業務を担う場合にも、この補助を使うことができます。国立は定額、公立・私立は1/2の補助となります。

緊急時における家庭でのオンライン学習環境の整備(154億円)

家庭にWi-Fi環境が整っていない子どもに自治体が貸与等をするためのLTE通信環境(モバイルルータ、USBドングル、SIMカード等の機器の費用。通信費は含まれない。)について1台あたり上限1万円を補助し、整備を支援するものです。加えて学校側の遠隔学習機能の強化として、カメラやマイクなどの通信装置の整備支援(1校当たり上限3.5万円)や、オンライン学習システムの導入に関する調査研究に関する経費も含まれています。

さらに、文部科学省は今後新型コロナウイルスの第2波・第3波が来ることも想定し、小6、中3等最終学年の児童生徒や、経済的理由等でICT環境を準備できない家庭に対しては少なくとも夏までにICT環境(学校から貸し出す端末)を整備するよう呼びかけています。家庭にWi-Fi環境や端末はあるものの、兄弟や、テレワークをする保護者との共有が多いため、実際に何台不足しているのかは調査する必要があります。

②整備前倒しによる供給不安解消に向けて

文部科学省では、新型コロナウイルス感染が拡大する前から、GIGAスクール構想の実現に向けて萩生田大臣と事業者の意見交換会を行うなど、例年1000万台前後である国内のPC出荷台数をどう増やすか、GIGAスクール構想の実現に向けて事業者との連携を図ってきました。 しかし、3学年分を想定していた令和2年度内の整備が一気に全9学年・約620万人分に前倒しされたことで(小1~中3までの児童生徒数は約930万人ですが、うち1/3にあたる約310万台程度は地方財政措置を利用して2022年度までに整備することが求められています。)、中国の工場は概ね再稼働し、10万円前後の法人向けとは価格帯も異なるとはいえ、多くの自治体が「年度内に端末は本当に供給されるのか」「供給不足にはならないのだろうか」という不安を抱えています。

文部科学省ではこうした状況に対し、需給調査を実施し、各自治体の需要見込みや調達状況について文部科学省が随時必要な情報を収集・共有し、事業者に対して供給に対する協力の呼びかけを行っていくとしています。また、供給だけでなくキッティングに時間がかかって年度内の整備が難しいのではないかといった不安の声に対しても、GIGAスクール構想のYouTubeチャンネル を通じて文部科学省自ら随時情報発信していますので要チェックです。

【まとめ】

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い加速したGIGAスクール構想。何としても1人1台端末環境を整えるという国の強い意志が感じられます。次回はそんなGIGAスクール構想の実現を考えるにあたっての具体的なポイントをご紹介します。

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 吉澤 日花里

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