意外と知らない"教育の情報化に係る制度改正"(第2回)遠隔・オンライン教育

 

2020年、新型コロナウイルス感染症による臨時休校の影響もあり、「遠隔・オンライン教育」が広く注目されました。Web会議システムを活用した同時双方向型で行う教育や、動画配信を活用した家庭学習については、どのような制度が整備されているのでしょうか。本記事では混同されやすい「遠隔授業」と「家庭学習」の位置づけの違いにも言及します。

また、教材のオンライン配信における著作権の面でも、「授業目的公衆送信補償金制度」が臨時休校の影響で前倒しして施行されました。

今回はこれら「遠隔・オンライン教育」に係る制度改正についての現状をご紹介します。

 

「遠隔・オンライン教育」「遠隔授業」等の定義

2020年は「遠隔・オンライン教育」について、様々な報道がありました。その中では「遠隔教育」「遠隔授業」等、使われる言葉も様々でした。中央教育審議会初等中等教育分科会が2020年10月に取りまとめた中間まとめから、まずはこれらの言葉の定義をご紹介します。

①遠隔・オンライン教育
遠隔システム(離れた場所同士で映像や音声などのやり取りを行うためのシステム)を用いて、同時双方向で学校同士をつないだ合同授業の実施や、専門家等の活用などを行う。また、授業の一部や家庭学習等において学びをより効果的にする動画等の素材を活用する。

②遠隔教育
遠隔システムを活用した同時双方向型で行う教育。正規の授業に限られない。

③遠隔授業
遠隔教育のうち授業で遠隔システムを使うもの。下記のいずれかの類型に当てはまるもの。

類型例
内容・メリット
合同授業型 当該教科の免許状を保有する教師が行う複数の遠隔の教室での授業をつなぐ。児童生徒が多様な意見や考えに触れたり、協働して学習に取り組んだりする機会の充実を図ることができる。
教師支援型 当該教科の免許状を保有する教師が行う授業に対して、専門家等が遠隔の場所から協働して授業を行う。児童生徒の学習活動の質を高めるとともに、教員の資質向上を図ることができる。
教科・科目充実型 高等学校段階において、当該学校の教師(当該教科の免許状の有無を問わない)の立会いの下、当該教科の免許状を保有する教師が遠隔の場所から授業を行う。生徒の多様な科目選択を可能とすることなどにより、学習機会の充実を図ることができる。


本記事ではこれらの定義に基づいて、「遠隔・オンライン教育」に関連する制度をご紹介します。

小・中学校段階の「遠隔・オンライン教育」における“出席扱い”

Web会議システムの登場や児童生徒用端末の普及により「遠隔・オンライン教育」が広がる中で、様々な制度が制定、改正されてきました。まず、「遠隔・オンライン教育」を「出席扱い」にできる制度にはどのようなものがあるのでしょうか。

現在、小・中学校段階において、一定の要件を満たせば指導要録上出席扱いにでき、その学習成果を評価に反映することができる対象として「不登校児童生徒」「病気療養児」があります。

①不登校児童生徒

2005年に文科省より出された「不登校児童生徒が自宅においてIT 等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について」では、小・中学校段階の不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行う場合、在籍校の校長は、一定の要件を満たす場合に、指導要録上出席扱いとすること、及びその学習成果を評価に反映することができるとされました。

一定の要件とは、
・保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること
・訪問等による対面指導が適切に行われること
・校長が対面指導や学習活動の状況等について十分に把握すること 等

とされ、「その学習活動が学校への復帰に向けての取組であることを前提とし」という文言が盛り込まれていました。

しかし、本制度に基づいて出席扱いとなった児童生徒は、2018年度時点で、不登校児童生徒164,528人中286人と、制度がなかなか浸透しなかったことから、2019年10月、「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」を改めて出し、復学前提でなくても出席扱いとし、成果を評価に反映できるとしました。その結果、2019年度は181,272人中608人に増加しました。

なお、「ICT等を活用した学習活動」については「遠隔・オンライン教育」はもちろんですが、郵送やFAXなどの活用も含まれています。そのため、コンピュータ等を使わなくとも、保護者との十分な連携をはじめとした要件を満たせば、出席扱いとすることができます。

②病気療養児

2018年9月に策定された「遠隔教育の推進に向けた施策方針」では、小・中学校段階の病気療養児に対する「遠隔教育」について、一定の要件を満たす場合は、指導要録上出席扱いとし、学習成果を評価に反映することができるよう措置を講じることが示されました。これは児童生徒の側に教員がいなくても出席扱いとなる措置で、入院している病院に院内学級が無い(教員がいない)場合や、自宅で療養している場合に有効です。ただし、「遠隔教育」であるため同時双方向型で行う必要があります。病気療養児の方が厳しい条件となっていることがわかります。

同月に文科省から出された「小・中学校等における病気療養児に対する同時双方向型授業配信を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について(通知)」では、

・配信側の教師は、当該病気療養児が在籍する学校の教師であること
・中学校では配信する授業の教科等に応じた相当の免許状を有する教師であること
・配信側及び受信側で同時に授業を受ける一学級の児童生徒の合計数は、原則40人以下とすること 等

が要件とされています。なお、この40人という数字は「小学校設置基準(平成14年文部科学省令第14号)第4条」を基準にしているため、昨今の学級の少人数化に合わせ、順次35人に変更されると思われます。

GIGAスクール構想による1人1台端末の整備により、こうした制度を利用した、不登校児童生徒や病気療養児への支援が広がることが期待されます。出席日数不足が進学等の不安材料となる場合、それを払拭できるのではないでしょうか。また、不登校は、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者 (ただし、病気や経済的理由に よるものを除く。)をいう。」と定義されているので、新型コロナウイルス感染症への不安から登校できない子どもへの支援としても活用できるのではないでしょうか。

高等学校の「遠隔授業」における“単位認定”

一方、高等学校においては、2015年4月から全日制・定時制課程の高等学校における「遠隔授業」が正規の授業として制度化されました。(※「遠隔・オンライン教育」ではなく、「遠隔授業」である点が重要です。)この制度は、対面により行う授業と同等の教育効果を有するとき、受信側に当該教科の免許状を持った教員がいなくても、同時双方向型の遠隔授業を行うことができることとしています。高等学校の全課程の修了要件である74単位のうち36単位までを上限として実施することが可能です。ただし、それぞれの授業に、教科・科目等の特性に応じて相当の時間数の対面により行う授業を実施するものとしています。

高等学校において、生徒数や地理的な要因により、当該免許をもった教員がいない学校では、芸術科目の書道や第二外国語等を開設出来ない状況でした。しかし、2015年度より、全日制・定時制課程の高等学校では、遠隔授業が可能となり、当該免許を持った教員がいなくても遠隔授業を行うことで教科・科目を開設し、幅広い教育を提供できるようになりました。これにより、先進的な内容の学校設定科目や相当免許状を有する教師が少ない科目の開設、小規模校等における幅広い選択科目の開設等、学校の創意工夫を生かすための裁量や生徒の選択の幅(多様性)を広げることができます。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、2020年10月には、遠隔授業で取得できる単位数を36単位までとする上限や、遠隔授業の受信側の教室などに教員配置を求めている要件を見直す考えを文部科学省が明確にしたと報じられており、今後、さらなる制度改正が進みそうです。

コロナ禍における“家庭学習の位置づけ”

新型コロナウイルスによる臨時休校措置が各地で続く中、2020年4月10日に出された「新型コロナウイルス感染症対策のための臨時休校等に伴い学校に登校できない児童生徒の学習指導について(通知)」では、特例的に「家庭学習の成果が一定の要件を満たした場合には、対面での再指導を不要とする」とされました。その要件とは、

① 教科等の指導計画に照らして適切に位置付くものであること。
② 教師が当該家庭学習における児童生徒の学習状況及び成果を適切に把握することが可能であること

の2点ですが、一部の児童生徒への学習の定着が不十分である場合には、別途、個別に補習を実施する、追加の家庭学習を適切に課すなどの必要な措置を講じることとされています。

この措置はあくまで「家庭学習の位置づけの変更」であり、家庭学習を「授業」として扱ってはいません。そのため高等学校においては、前述の「36単位縛り」の単位算定に反映する必要もありません。つまり、コロナによる休校期間中の、授業動画の配信やZoom等のWeb会議システムを用いて教員と家庭内の子どもを繋いだ学習は、「授業」ではなく、あくまで「家庭学習」という位置づけになります。

コロナ禍においてよく目にした「オンライン授業」という言葉は、「遠隔・オンライン教育による家庭学習」であり、文部科学省が定義する「遠隔授業」とは異なることに注意が必要です。「受信側に教員が必要・不要」といった議論も、この定義を整理した上で行う必要があるでしょう。

 
受信側の教員
備考
遠隔授業
必要
病気療養児が自宅・病室等から受ける場合、要件を満たせば、受信側に教員は不要
家庭学習
不要
コロナ禍の特例措置として、要件を満たせば対面での再指導が不要
※不登校児童生徒については、前述の通り自宅での学習を学校長の判断で出席扱いにできます。


なお、「授業」に教員が必要な理由については、萩⽣⽥光⼀⽂部科学⼤⾂が2020年12⽉25⽇の会⾒で「学校教育においては、教師が子供たち一人一人の日々の様子・体調や理解度を、直接、確認・判断し、子供たちの理解を高めたり、生徒指導を行ったりすることが重要であり、多様な子供たちへのきめ細かいケアや、怪我や急病等に不測のリスクに対応する安全管理の観点からも、受信側に教師を配置することが必要である。」と述べています。

また、萩生田大臣はこの会見で、この家庭学習についての特例措置を、非常時に限った「学びの保障」の措置として恒久的な制度とし、来年度から実施する考えを明らかにしています。

授業目的公衆送信補償金制度

一方、「遠隔・オンライン教育」にあたり、注意しなければならないのが「著作権」です。「授業目的であれば、著作権は気にしなくていいのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。たしかに、対面の授業において、「他人の著作物を利用した教材を紙にコピーして、児童生徒、学生に配付する」等は著作権法35条に示される無償の範囲なので問題ありませんでした。しかし、「インターネットを経由して提供する(=公衆送信する)こと」は授業目的でも原則禁止で、個別に著作者の許諾が必要でした。しかし、この制度のままでは、GIGAスクール構想により端末配備が進んでも、思うように活用ができません。これを改善するために2018年に著作権法が改正され、「授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)」へ一定の補償金を支払うことで、公衆送信全般を権利者の許諾なく行えるようになりました。これが「授業目的公衆送信補償金制度」です。公衆送信を行う場合、本制度の利用は法令上の義務となります。

 2020年12月18日付で認可された補償金の金額は、校種別に以下の通りで、2021年度から必要になり、教育機関の設置者(教育委員会、学校法人など)が負担します。

校種
1人当たりの補償金額(年額)
幼稚園
60円
小学校
120円
中学校
180円
高等学校
420円
大学
720円


新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、教育機関で遠隔授業の需要が急速に増大している事態に対応するため、2020年度に限って緊急的かつ特例的な措置として「無償」となっています。3月中に教材を配信した学校では、個別に許可を得ていたそうです。

本制度を利用するためには、教育機関の設置者がSARTRASに届け出をする必要があります。公立学校は、教育委員会がまとめて届け出をするので、学校ごとの届出は不要です。私立学校は、学校法人として届け出をする必要があります。

なお、2020年10月7日に行われた「授業目的公衆送信補償金制度に関するオンライン説明会」の様子をYouTubeで見ることができます。

GIGAスクール構想により1人1台の端末が整備され、その活用を進めていく中で、遠隔授業を行う機会や、動画・テレビ会議システムを活用した家庭学習の機会が増えるのではないでしょうか。端末活用の効果を最大限発揮するためにも、関連制度を正確に把握することが重要です。本記事が、端末を活用する際の参考になれば幸いです。

 

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 秋野光哉

 

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