意外と知らない"学校・教員評価"(第1回)校長先生の権限の強化と学校評価

 日本の教育の質保証のシステムとして、全国学力調査と並んで、学校評価システムがあるのをご存知ですか。最近は学校が保護者の満足度を上げるために保護者を感動させる工夫をしている、「この学校で良かったと思いますか。」というような保護者アンケートがあるといった話を聞かれたことがあるかもしれません。今回は、その目的や種類、評価項目などについて紹介します。

背景

現代の学校には、企業と同じように経営ビジョンを構築し、それに基づいて目標(Plan)-実行(Do)-評価(Check)-改善(Action)というPDCAサイクルを回し、説明責任を果たすことが求められています。

学校の教育活動には、多くの人々に子ども時代に同じような経験をさせることで社会の安定化を図るといった、テストで測定できる学力を向上させる以外の目的もあります。効果が出るまでに時間がかかるため、成果の予測と評価が困難です。また、仮に学力向上だけを目標にしたとしても、その達成方法は、工業製品の生産のように明確なものではありません。

それでも2000年代から、学力テストの点数など、成果を数値で設定して、それを評価する成果主義や、学校評価、教員評価などの施策がほとんどの自治体や公立学校で導入されて、普及してきました。その背景には、少子高齢化が進み、教育に関する予算の確保が困難になる中でニーズの多様化・複雑化に対応するため、学校経営に民間企業の経営手法や発想を取り入れて、学校教育の活性化や予算の効率化を図ろう、校長先生(経営者)の人事や予算に関する権限を強化し、同時に業績や結果の形で定義された目標の達成を強く求めようというニュー・パブリック・マネジメント(NPM)の考え方があります。

学校評価とは

学校評価とは、「子どもたちがより良い教育を享受できるよう、その教育活動等の成果を検証し、学校運営の改善と発展を目指すための取組」であり、(1)自己評価、(2)関係者評価、(3)第三者評価の3種類があります。

(1)自己評価 学校教育法施行規則第66条に定められている自己評価は、各学校の教職員が行う評価です。校長のリーダーシップの下で、当該学校の全教職員が参加して行います。
教科、学年、係、委員会などの校内の組織が担当業務(校務分掌)について、チェックリストや質問票を用いて自己評価・反省を行い、それをまとめることが多いようです。保護者や地域住民にアンケート調査を実施することもあります。
(2)学校関係者評価 PTA役員や学校評議員をはじめとする保護者、地域住民などの学校関係者により構成された評価委員会等が、その学校の教育活動の観察や意見交換等を通じて、自己評価の結果について評価することを基本として行う評価です。
教職員による自己評価と保護者等による学校関係者評価は、学校運営の改善を図る上で不可欠のものとして、有機的・一体的に位置付けるべきとされています。
(3)第三者評価 2010年に改訂された「学校評価ガイドライン」で、従来の「外部評価」が「関係者評価」と「第三者評価」に分けられました。第三者評価は、学校とその設置者(教育委員会など)が実施者となり、学校運営に関する外部の専門家を中心とした評価者により、自己評価や学校関係者評価の実施状況も踏まえつつ、教育活動その他の学校運営の状況について専門的視点から行う評価です。
必要な場合に行うとされており、実施義務や実施の努力義務はありません。

1998年に出された「今後の地方教育行政の在り方について(中央教育審議会答申)」を受けて、2002年度に出された学校設置基準で学校評価の実施・結果公開が努力義務となり、2007年に学校教育法が改正されて、2008年度から(1)自己評価が義務化され、(2)学校関係者評価が努力義務となりました。

2014年に実施された「学校評価等実施状況調査」では、努力義務である(2)学校関係者評価も国立学校の95.0%、公立学校の96.0%が実施していました。(3)第三者評価は国公立学校の17.8%、公立学校の5.6%が実施していました。

<学校教育法>

第42条
小学校は、文部科学大臣の定めるところにより当該小学校の教育活動その他の学校運営の状況について評価を行い、その結果に基づき学校運営の改善を図るため必要な措置を講ずることにより、その教育水準の向上に努めなければならない。

第43条
小学校は、当該小学校に関する保護者及び地域住民その他の関係者の理解を深めるとともに、これらの者との連携及び協力の推進に資するため、当該小学校の教育活動その他の学校運営の状況に関する情報を積極的に提供するものとする。

 

<学校教育法施行規則>

第66条 ※上記の(1)自己評価
小学校は、当該小学校の教育活動その他の学校運営の状況について、自ら評価を行い、その結果を公表するものとする。

2 前項の評価を行うに当たっては、小学校は、その実情に応じ、適切な項目を設定して行うものとする。

第67条 ※上記の(2)学校関係者評価
小学校は、前条第1項の規定による評価の結果を踏まえた当該小学校の児童の保護者その他の当該小学校の関係者(当該小学校の職員を除く。)による評価を行い、その結果を公表するよう努めるものとする。

第68条
小学校は、第66条第1項の規定による評価の結果及び前条の規定により評価を行った場合はその結果を、当該小学校の設置者に報告するものとする。

※他校種にも同様の基準が定められた。

学校評価の流れ

年度初めに、児童生徒や保護者、地域住民を対象とするアンケートや、保護者等との懇談会を通じて、授業の理解度や保護者・児童生徒の意見や要望を調査し、それに基づいて重点目標や評価項目・指標を設定します。年度末に、設定した目標や具体的計画等に照らして、その達成状況や達成に向けた取組の適切さ等について評価を行います。「○○市立学校学校評価実施要項」などを定め、一部の項目を必須にして、特定の学校運営や教育活動を促している自治体もあります。

重点目標は、児童生徒や保護者にも周知することとされており、年度初めに1~4つ程度設定されることが多いようですが、校内の組織ごとに設定されている場合もあります。例えば、「重点目標:確かな学力の定着と向上」に対し、目標達成に必要な評価項目・指標等として「授業の中に対話的な活動を設定する」「問題解決学習・体験学習等に取り組む」「個別指導の充実を図る」「ベーシックドリルを活用して各教科での基礎・基本の定着を目指す」といった具体的な取組内容を決めます。「単元末テストの平均点を85点以上にする」「児童・保護者アンケートで、『授業が分かりやすい』などの肯定的回答を90%以上にする」のように達成指標を数値で明示している学校もあります。

文部科学省「学校評価ガイドライン」に評価項目・指標等の設定について検討する際の視点12分野が例示されており、2014年の調査では、教育課程・学習指導が97.1%と一番多く、生徒指導が86.4%と次に多くの学校が評価項目として設定していました。生徒指導では、挨拶や言葉遣い、服装、給食後の歯磨きの習慣化等があります。近年では「働き方改革」を設定する学校もあります。

目的と課題

学校評価の目的として、下記の3つが挙げられています。

学校評価ガイドライン(P.2)より

  1. 各学校が、自らの教育活動その他の学校運営について、目指すべき目標を設定し、 その達成状況や達成に向けた取組の適切さ等について評価することにより、学校として組織的・継続的な改善を図ること。
  2. 各学校が、自己評価及び保護者など学校関係者等による評価の実施とその結果の公表・説明により、適切に説明責任を果たすとともに、保護者、地域住民等から理解と 参画を得て、学校・家庭・地域の連携協力による学校づくりを進めること。
  3. 各学校の設置者等が、学校評価の結果に応じて、学校に対する>支援や条件整備等の改善措置を講じることにより、一定水準の教育の質を保証し、その向上を図ること。

「学校評価ガイドライン」にも留意事項として「学校評価は、あくまでも学校運営の改善による教育水準の向上を図るための手段であり、それ自体が目的ではない。学校評価の実施そのものが自己目的化してしまわないよう、地域の実情も踏まえた実効性のある学校評価を実施していくことが何よりも重要である。」と記載されていますが、書類作成や評価の根拠となるデータ収集だけで疲れてしまい、十分に活用できていないとも言われています。

上記の調査でも、自己評価結果を「職員会議等で改善の手だてについて話し合う機会を設けた」のは92.4%、「改善のための具体的な取組に活かした」のは77.4%、「その後の基本方針や目標設定に活かした」のは69.7%でしたが、学校関係者評価は、それぞれ62.9%、53.9%、45.7%という結果でした。教員による自主的、協働的な学校改善にもっと活用しやすい学校評価システムになることが期待されています。

第2回では、教員評価を取り上げます。

 

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 江本真理子

 

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