意外と知らない"学校・教員評価"(第2回)教員の能力評価と業績評価

 第1回では学校評価システムについて紹介しました。第2回では、教員評価システムを取り上げます。

新しい教員評価システムの導入

長い間、教員の勤務成績の評定の結果は給与と人事に反映させないという扱いがなされてきましたが、2000年度に東京都教育委員会が「職員の資質能力の向上及び学校組織の活性化を図ること」を目的として、管理職に続いて、一般教員にも「能力と業績に応じた適正な人事考課」を導入しました。

これを受けて同年12月、総理大臣の私的諮問機関である教育改革国民会議の報告「教育を変える17の提案」の第11項目として「教師の意欲や努力が報われ評価される体制をつくる」が提案され、文部科学省は2003年、全都道府県・指定都市教育委員会に、新たな教員評価システムについて調査研究を依頼しました。

その後、徐々に全国に拡大し、「地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律」により、2016年4月1日から、職員が果たすべき職務をどの程度達成したかを把握して、挙げた業績を評価する「業績評価」と、職員の職務上の行動等を通じて、発揮した能力を把握して行う「能力評価」の2本立ての人事評価制度の導入が全ての自治体に義務付けられました。評価はするものの、10年目までは昇給に反映させないといった対応をしている自治体もあります。

高い評価を受ける教師とは

2005 年の中教審の答申「新しい時代の義務教育を創造する」では、優れた教師の条件として下記の3つの要素を挙げました。

  1. 教職に対する強い情熱
    教師の仕事に対する使命感や誇り、子どもに対する愛情や責任感などである。
    また、教師は、変化の著しい社会や学校、子どもたちに適切に対応するため、常に学び続ける向上心を持つことも大切である。
  2. 教育の専門家としての確かな力量
    「教師は授業で勝負する」と言われるように、この力量が「教育のプロ」のプロたる所以である。この力量は、具体的には、子ども理解力、児童・生徒指導力、集団指導の力、学級作りの力、学習指導・授業作りの力、教材解釈の力などからなるものと言える。
  3. 総合的な人間力
    教師には、子どもたちの人格形成に関わる者として、豊かな人間性や社会性、常識と教養、礼儀作法をはじめ対人関係能力、コミュニケーション能力などの人格的資質を備えていることが求められる。また、教師は、他の教師や事務職員、栄養職員など、教職員全体と同僚として協力していくことが大切である。

また、中教審「教員の資質能力向上特別部会」は2010年に公表した審議経過報告で「教員に求められる資質能力」として、下記の2点を挙げています。

(1)高度な専門性と社会性、実践的指導力、コミュニケーション力、チームで対応する力

(2)一斉指導のみならず、創造的協働的な学び、コミュニケーション型の学びに対応できる力

この内容が2015年に下記のように具体化されました。

2.これからの時代の教員に求められる資質能力
  • これまで教員として不易とされてきた資質能力に加え,自律的に学ぶ姿勢を持ち,時代の変化や自らのキャリアステージに応じて求められる資質能力を生涯にわたって高めていくことのできる力や,情報を適切に収集し,選択し,活用する能力や知識を有機的に結びつけ構造化する力。
  • アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善,道徳教育の充実,小学校における外国語教育の早期化・教科化,ICTの活用,発達障害を含む特別な支援を必要とする児童生徒等への対応などの新たな課題に対応できる力量。
  • 「チーム学校」の考えの下,多様な専門性を持つ人材と効果的に連携・分担し,組織的・協働的に諸課題の解決に取り組む力。

逆に不適切な指導についても下記のように例示されています。

  1. 教科に関する専門的知識、技術等が不足しているため、学習指導を適切に行うことができない場合(教える内容に誤りが多かったり、児童等の質問に正確に答え得ることができない等)
  2. 指導方法が不適切であるため、学習指導を適切に行うことができない場合(ほとんど授業内容を板書するだけで、児童等の質問を受け付けない等)
  3. 児童等の心を理解する能力や意欲に欠け、学級経営や生徒指導を適切に行うことができない場合(児童等の意見を全く聞かず、対話もしないなど、児童等とのコミュニケーションをとろうとしない等)

評価の対象

教員評価の対象には、特性、実践、成果の3つのカテゴリーがあります。

  1. 特性(教育、経験、資格、教える内容に関する知識、教授学的知識、学習者と学習に関する理解、価値、信念、姿勢など)
  2. 実践(教室での活動、生徒との交流、同僚・保護者との交流、地域住民との活動など)
  3. 成果(自動・生徒の学習到達度、卒業率、態度、行動、意欲、社会的・情緒的幸福、自己効力感など)

評価の項目は、「学校職員の人事評価実施要領」のような名称で各自治体が公開しています。

校長であれば、①学校経営の改善・運営管理、②地域連携、③施設・事務等の管理、予算運用、④教育計画の実施・評価・改善、⑤教職員の管理・育成など、一般教員であれば、①教科指導、②学年・学級経営、生徒指導、③担当する校務、④学校経営への参画などの評価項目になります。

4~5月頃に今年度の目標を設定し、8~9月頃に中間確認、1~2月頃に自己評価を行います。地域によっては、前半と後半それぞれ目標設定、評価を行います。業績評価は4~3月、能力評価は10~9月と期間が異なる地域もあります。

業績評価

業績評価については、自分で目標を設定します。学校評価同様、どのような現状に対して、何を、いつまでに、どの程度まで、どのようにするのか等、具体的な行動内容や達成目標を所定の様式に記入します。

例えば、「2年生英語の教科担任として、書くことに苦手意識を持たせないために、授業中にキーセンテンス暗唱の時間を十分に確保し、クラスの全員がキーセンテンスの書き取りを8割程度できるようにする。」「いじめのない学級集団づくりのため、児童の日記を丁寧に見て、コメントを欠かさず書き、『毎日喜んで学校に行く』とする回答を前期70%、後期終了時には85%以上にする。」のように設定します。しかし、忙しすぎてゆっくり検討する時間が確保できず、毎年同じような目標設定になってしまうこともあるようです。

能力評価

能力評価は、潜在能力ではなく、職務上発揮された能力(行動)を評価します。勤務時間外の部活動指導は直接的には評価対象外とされていることが多いようです。予め定められた行動内容について自己申告します。

以下に、熊本県の基準から、学習指導と生徒指導の例を1つずつ紹介します。

学習指導:授業の進め方

S:児童の課題意識や思考を大切にした問題解決的な学習過程を工夫し、児童の興味・関心を高め、自ら学ぶ楽しさを実感できるような授業をしている。

A: 児童の理解の程度等を的確に把握し、個に応じた補充的・発展的な学習指導をしている。

B:年間指導計画に沿って、基礎的・基本的な内容の定着につながる授業をしている。

C: 基本的に求められる職務行動(B)にやや満たない。

D: 基本的に求められる職務行動(B)を著しく下回り、業務に支障をきたした。

生徒指導:日常的指導

S: 児童一人一人の個性を尊重しながら、児童の意欲や自主性を引き出す指導に努めている。

A:基本的な生活習慣の確立や児童相互の好ましい人間関係づくりをめざし、規則正しい生活や礼儀作法、相手への思いやり、生命尊重等について、適切な指導に努めている。

B:日頃から児童の思いを受け止めながら、教師と児童の信頼関係づくりに努めている。

C: 基本的に求められる職務行動(B)にやや満たない。

D: 基本的に求められる職務行動(B)を著しく下回り、業務に支障をきたした。

評価の参考にされている情報と活用

「TALIS2018報告書 vol.2ー専門職としての教員と校長ーのポイント」によると、日本では、小学校教員の97.3%、中学校教員の88.9%が年に1回以上校長から公的な評価を受けています。また、中学校教員の55.6%は、年に1回以上教育委員会など外部の個人又は機関からも公的な評価を受けています。

教員への公的な評価の一環として、校長が参考にしている情報は、「授業観察」(小学校100.0%、中学校99.3%)、「指導している児童生徒の外部テスト(例:全国学力調査)の結果」(小学校93.8%、中学校92.9%)、「学校内と学級内での児童生徒の成果(例:成績、プロジェクトの成果、テストの点数)」(小学校94.2%、中学校89.9%)、「教員の指導に関する児童生徒へのアンケートの結果」(小学校81.9%、中学校84.6%)が多いという結果でした。

多くの校長は、教師との新たなコミュニケーションの手段や機会を提供するものであり、学校組織の一体感の醸成や経営方針の共通理解や共有化に役立っているとして有意義だと感じています。しかし、教師の資質能力の向上に直接的な効果を発揮していると考える校長は多くないようです。これに対し、教員は、コミュニケーションや共通理解の促進についても、自身の職務意欲の向上や職能成長についてもあまり有効性を感じていないと言われています。

優秀教員表彰制度

教育改革国民会議の報告「教育を変える17の提案」で、「努力を積み重ね、顕著な効果を上げている教師には、『特別手当』などの金銭的処遇、準管理職扱いなどの人事上の措置、表彰などによって、努力に報いる。」と提案されたことから、新しい教員評価システムの導入と同時に、7割の自治体が優秀教員表彰制度も制度化しました。2010年の文部科学省の調査では全国 58 の都道府県・政令指定都市(85%以上)に優秀教員表彰制度があり、2割程度で給与上の、半数程度で教員免許更新講習の受講免除などその他の優遇措置が行われています。

2007年に「文部科学大臣優秀教員表彰」が始まり、各都道府県・政令指定都市の教育委員会に被表彰者の推薦を依頼するようになったことに伴って増えたと言われています。2019年度は825名の教職員、48の教職員組織が表彰されました。実践分野には①学習指導、②生徒指導、進路指導、③体育、保健、給食指導、④特別活動指導、部活動指導、⑤特別支援教育、⑥地域連携、⑦ユネスコ活動、国際交流、⑧学校運営改善、⑨その他があり、個人では①学習指導50.5%、次いで⑤特別支援教育10.4%が多く、組織では①学習指導33.3%、次いで⑥地域連携25.0%が多いという結果でした。

これらの改革により、教師の仕事に対する動機付け構造も、自分の役割を限定して組織目標に沿った行動を是とする「組織へのスペシャリスト」へと変化したと言われています。大規模な世代交代が進む中で、教師一人一人の教育専門的な知識や判断を正当に評価し、職能成長を支援する評価の在り方が今後も注目されます。

 

 

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 江本真理子

 

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