意外と知らない"学校と地域の連携・協働"(第1回)地域と連携することで実現する豊かな学び

 

次世代の社会を担う子どもたちを育てる学校は、地域コミュニティの中心として機能してきた場所でもあります。とりわけ日本の小学生の98%、中学生の92%が通う公立小中学校は、居住地域により通う学校が決まる学区制が一般的であり、地域行事や防災活動の拠点でもあります。

本稿では3回に分けて、学校と地域が一体となって子どもたちの学びや成長を支える仕組みや、具体的な取り組みの事例について、コミュニティ・スクールや地域学校協働活動等を中心にご紹介します。

 

2020年度からの新学習指導要領では、「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る」という理念を学校と社会が共有し、社会と連携・協働しながら未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む「社会に開かれた教育課程」の実現が掲げられています。「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた新学習指導要領の着実な実施や学校における働き方改革の推進、GIGAスクール構想の実現等に加え、不登校やいじめへの対応、感染症対策、防災など、学校や地域が抱える様々な課題に対応しつつ、未来を担う子供たちの成長を支えていくために、これまで以上に学校・家庭・地域の連携・協働が必要とされています。

学校と地域の連携・協働と聞いて、どのような取り組みが思い浮かぶでしょうか。文部科学省ウェブサイト「学校と地域で作る学びの未来」などで、学校や地域の状況に応じた様々な活動が紹介されています。ここでは、以下の5つに整理して、見ていきたいと思います。

  1. 学校運営への協力、支援
  2. 魅力ある教育プログラム、多様な体験、学習支援
  3. 家庭教育支援
  4. 学びによるまちづくり
  5. 地域活動への参加

1.学校運営への協力、支援

登下校の見守り、花壇や通学路等の学校周辺環境の整備、本の読み聞かせ、授業の補助や部活動の支援などが行われています。学校ニーズをもとに地域の協力者を集めますが、学校から地域への一方通行にならないよう、双方向に意見をすり合わせ、互いの役割を認識し合って協働しながら、子どもたちの育成につながる活動にしていくことが期待されます。

2.魅力ある教育プログラム、多様な体験、学習支援

文部科学省は、下記のような施策を推進しています。

  • 土曜学習応援団などの外部人材を活用した教育活動

民間企業や団体などが、各々の特色を生かして学習・体験プログラムの実施、キャリア教育支援、職場体験の受け入れなどの取組を行います。実社会での経験や専門知識、先端的な技術等を活かした教育活動は、新学習指導要領の理念として掲げられている「社会に開かれた教育課程」の実現につながるものと考えられます。

土曜学習応援団は、土曜日に限らず、夏休み、冬休み、平日の授業や放課後等に、企業・団体・大学等による出張授業や施設見学等を提供するものです。「土曜学習応援団」のウェブサイトには現在800以上の企業等の登録があり、すべての都道府県に100以上のプログラムが掲載されています。例えば、証券会社による出張授業として、児童生徒数人のグループを一つの会社に見立て、新商品の企画・開発を行い、応援したいと思うグループ(会社)に模擬紙幣を投票(出資者集め)して、株式会社と株式について体験的に学ぶプログラムや、化学メーカーによる、酸性雨の仕組みや地球環境の保全について学ぶプログラムなど、多様で魅力あるプログラムや実践事例が紹介されています。

  • 放課後子供教室、地域未来塾

すべての児童・生徒が充実した放課後を過ごすための学習・体験活動を提供する取組です。学校と地域住民等が連携・協働して活動に関わることで、地域全体で子どもたちの成長を支えていくための体制構築を図ろうとしています。

放課後子供教室では、学習支援、実験・工作教室、英会話 、文化・芸術教室、スポーツ活動、地域探検、農業体験 などのプログラムを提供します。安全・安心な子どもの活動拠点(居場所)でもあり、放課後児童クラブと連携して、情報共有や、一体型の取組が推進されています。

地域未来塾は、学習支援が必要な児童生徒を対象とした、大学生や教員OB、NPOなどの地域住民、学習塾や学習サービス提供者等の協力による原則無料の学習支援です。放課後や土曜日、夏休み等に、学校の空き教室や図書室、公民館等において、予習・復習、英語学習、英検・数検等の検定試験対策、定期考査前の集中プログラム、大学生等による進路相談等が行われています。学習が遅れがちな児童生徒に対して学習習慣の確立と基礎学力の定着・高等学校等進学率の改善や学力向上を図り、学習機会の提供による貧困の負の連鎖を断ち切ることが目指されています。

3.家庭教育支援

子育ての悩みや不安を抱えたまま保護者が孤立してしまう傾向や、地域の地縁的なつながりの薄さなどから、子育て・家庭教育支援における住民相互の対話や相互扶助による地域づくりが求められています。子育て経験者や地域の子育てサポーターリーダー、民生委員・児童委員、保健師や臨床心理士など、様々な地域の人たちが関わり、地域で子育てや家庭教育に関する相談に乗ったり、親子で参加する様々な取組を行ったり、子育て講座などを行う取組です。主に学校や公民館などを拠点として活動しています。

4.学びによるまちづくり

地域の景観、伝統文化、芸術など地域の社会資源を生かしたり、地域防災、環境問題、過疎化などの課題を解決したりするには、地域の様々な関係者により地域ぐるみで取り組むことが必要となるでしょう。子どもたちも地域を創っていく一員として、地域住民と共に主体的に考えることができるような学習活動を進めていくことが必要です。地域の様々な関係者を巻き込み、行政分野や世代を超えた協働が形成されるネットワークを作って学びの機会を提供し、子どもたちや地域住民が連携・協働する機会を増やすことで、コミュニティの再生を図ることが期待されています。地域により様々な取組の事例がありますが、いくつか特徴的なものを取り上げて紹介します。

事例:奈良県奈良市富雄中学校区地域教育協議会「学区ブランド産品開発プログラム」

地元の資源として「古代米」に着目し、古代米を使ったゴマ団子の企画開発、商品化までのプロセスを、コーディネーターを中心に、地域の団体や、近隣の製造、小売業で働く地域住民、教員がサポート。「和菓子バージョン(老舗和菓子店の協力による制作)」と「中華菓子バージョン(企業の協力で冷凍食品としての制作)」の2種類のゴマ団子を開発。

ゴマ団子は、コーディネーターが地域企業に働きかけ、生徒たちがプレゼンすることで、レストランメニューへの追加やコンビニでの販売、市長へのプレゼンにより給食にも採用されている。

初年度、小学5年生の「総合」の時間に始まった取組が、中学校へ引き継がれ、その後新しく設立した部活動「ボランティア部」が継承するとともに、全校生徒の財産として引き継いでいくため、キャリア教育の材料としても活用されている。また、製造時に使用した油を利用し、ボランティア部と「放課後子ども教室」が共同で『エコ石けん』の作成や、栽培した「古代米」のワラを使った『しめ縄』の作成など、派生した新たな取組が進み、子どもたちの学びの支援としてだけでなく、企業・団体や住民にとっても地域参画のきっかけ、学びの機会となっており、子どもたちと共に育つ地域づくりが進んでいる。

事例:広島県立大崎海星高等学校魅力化プロジェクト

平成27年、島唯一の県立高校を廃校にさせないために、高校と地域、自治体が一体となった「大崎海星高校魅力化プロジェクト」が始まった。「地域に開かれた学校」として様々な人材と連携するために町がコーディネーターを学校に配置し、地域の資源を生かした総合的な探究の時間「大崎上島学」の計画・実施、地域人材を活用した公営塾の運営、全国から入学する生徒のための教育寮の設置等を行っている。

「大崎上島学」において、地域と密接に関わることにより、生徒達にとっては、島の魅力に気付くとともに,自らの生き方を考える契機となり、地元企業にとっても、高校生に自分の仕事や考え方を話すことは、刺激や励みになっている。この取組をきっかけに生徒が開発した商品を町のイベントに出品する、農家のマルシェを高校の文化祭で開くなど交流が深まり、地域全体の盛り上がりに繋がっている。また生徒は、地域行事,ボランティア活動等にも積極的に参加しており、特に少子高齢化により存続が危ぶまれている大崎上島伝統の「櫂伝馬競漕」の主要な担い手となっている。

事例:東京都三鷹市 みたかSC(スクールコミュニティ)サポートネット

地域の自主防災組織と学校のつなぎ役として、小中学校での学年に応じた防災授業を、教員と共に作り上げ、小中学生と共に防災訓練に参画。防災訓練にあたり、地域が何をするのか、中学生が何をするのか、コーディネーターが中心となって調整することで、参加する中学生にも、地域のお手伝いという感覚から、授業で学んだことを生かし、主体的に活動する意欲が芽生えている。

5.地域活動への参加

子どもたちが学校内だけでなく、地域に出ていき、地域の祭り、伝統行事やイベントなどの担い手として参加していく取組を、学校と連携して進めていこうとするものです。子供たちが社会と接点を持ち、多様な人たちとつながりを持ちながら学んでいくことにより、社会を深く知り、自分の活動が誰かのためになるなどの気づきを得るなど、心豊かに成長していく機会を持つことが期待されています。

事例:宮城県都城市山田中学校支援地域本部

中学校の生徒会担当の教員に、お祭りなどの地域行事の一覧表、ボランティア活動やボランティア講習会等への参加募集のチラシを提供し、参加者を募集。生徒のボランティア活動や地域貢献への意識が向上し、ボランティア活動への参加を多くの生徒が希望するようになった。生徒のコミュニケーション能力等の向上にもつながることが期待される。

ここまで、学校と地域の連携・協働の具体例を大きく5つに分けて見てきましたが、これらはばらばらの個別の活動ではなく、総合化、ネットワーク化し、多様な活動を継続的に進めていくことが目指されています。また実際の取組の様子は地域の実情に応じて様々です。例えば、放課後子供教室から始まり、郷土学習や学校と地域の行事の共催などを実施する場合もあれば、学校の環境整備や登下校の見守りから始まり、放課後や土曜日の教育支援に拡張する場合もあります。多様な活動の全てを最初から行うことを求めるのではなく、それぞれの地域の状況に応じて、まずは子供たちの成長にとって何が重要であるかを共有し、ビジョンを持つことが重要とされています 。

第2回では、多くの関係者間でビジョンや目標の共有を通して、幅広い地域住民の参画、活動の活性化につなげていくための仕組みとして、「コミュニティ・スクール」や「地域学校協働活動」の制度について紹介します。

 

構成・文・写真:内田洋行教育総合研究所 主任研究員 井上 暁代

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