意外と知らない"学校と地域の連携・協働"(第3回)

避難所としての学校と、コロナ禍での連携

 

新型コロナウイルス感染症は、世界各地で、人々の生活や価値観、経済や文化など社会全体へ大きな影響を与えています。学校と地域の連携・協働においても、さまざまな活動が制約を受ける一方で、学校・家庭・地域の役割分担や連携・協働の重要性が改めて浮き彫りとなったのではないでしょうか。また、地震等の災害発生後の避難生活や、被災地での復興などにおいても、突然奪われてしまった日常の生活や、子どもたちの多様な学びや経験を取り戻すために、学校と地域の協働は欠かせないものであるといえます。

第3回では、被災地での復興や防災における事例や、新型コロナウイルス感染症対応下における2020年度以降の取り組み事例を紹介します。そのうえで、シリーズのまとめとして学校と地域の連携・協働を発展させる際の課題について考察します。

 

災害発生直後の学校と地域の連携

災害時、多くの学校施設は避難所として活用され、地域の安全・安心を支える存在となります。避難所運営を円滑に行うために、発災から一定期間は、可能な限り学校関係者が避難所運営の協力をしつつ、防災担当部局が中心となって地域住民等と協力し、運営することが重要とされています。その一方で、学校での教育活動の再開は、地域が日常を取り戻し、災害からの復旧復興への第一歩となることから、教職員が授業再開準備業務に専念できる体制への移行が必要であり、自主防災組織又は防災担当部局等が連携しながら運営することが必要とされています。

2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震において、地域学校協働本部の前身である学校支援地域本部が設置されていた学校は、避難所の運営や自治組織が立ち上がる過程がスムーズだったようです。

災害からの復興、災害の経験を踏まえた防災に関する事例

事例 :岩手県大槌町

東日本大震災の津波により大きな被害を受けた大槌町では、震災からの復興・防災を基盤とした「生きる力」・「ふるさと創生」の教育を推進し、ふるさとの将来を担う人材の育成を目指してきた。

次代を背負って立つ子どもたちを育て、魅力的な地域・学校づくりを推進するため、小中一貫教育の取組として「ふるさと科」を全学年に設置。「ふるさと科」では、復興に取り組む地域産業に関する学習、防災教育・ボランティア教育・福祉教育・キャリア教育等を盛り込み、継続性、系統性を重視したカリキュラムを9年間にわたって実施することにより、地域参加型の豊かな体験の創出と学びの充実を図っている。町内の多くの個人商店をふるさと科の講師等として招き、「新巻鮭作り」や「わかめの学習」等の創意工夫のある多様な活動をサポートしている。

事例 :熊本県

熊本地震の経験を踏まえ、災害時の対応が円滑に進むよう、県立高校に「防災」に重点を置いたコミュニティ・スクールを導入。学校と地域の連携・協働を進め、地元自治体(市町村)との避難所指定の協定締結を進めるとともに、地元住民との合同防災訓練など、地域と一体となった取組を実施している。

新型コロナウイルス感染症対応下における事例

2020年3月から最長で約3か月間、新型コロナウイルス感染症対策のため、全国の学校で一斉臨時休業が行われました。しかしその後、2020年6月には、「新型コロナウイルス感染症に対応した持続的な学校運営のためのガイドライン 」にて、新型コロナウイルス感染症への長期的な対応が見込まれることから、学校における感染及び拡大のリスクを可能な限り低減したうえで、学校運営を継続していく必要があると示されました。また、感染の状況等に応じて臨時休業が必要かどうかの慎重な判断や、分散登校、時差登校、オンライン学習等を取り入れながら、持続的に児童生徒等の教育を受ける権利を保障するとともに、子どもたちの心身の状況の把握、居場所の確保等が求められています。

臨時休業中の子どもの居場所確保に向けた取り組みについて、2020年3月時点の文部科学省の調査によると、課業時間内の学校受け入れ(755自治体:44.7%)、放課後児童クラブ(686自治体:40.6%)、放課後子供教室(80自治体:4.7%)(設置する小学校において臨時休業を実施する自治体総数(1689)に対する割合)が行われました。また、休館している公立図書館で子どもたちを受け入れ、通常は学校で勤務している支援員が図書館の職員と共に見守りを行った自治体や、市の他部局の職員や給食センターの調理員が見守り事業に参画した自治体もあったようです。

第1回で紹介したような、学校と地域の連携による子どもたちの多様な体験・経験の機会や学びの支援についても、様々な工夫による継続や、この状況だからこそといった新たな取り組みへの挑戦が行われている例があるようです。以下に新型コロナウイルス感染症対応下における事例をいくつか取り上げて紹介します。

事例:東京都西東京市立保谷第二小学校
学校動物の飼育活動が継続できるよう地域が支援

[普段の取り組み]
学校における動物飼育活動に長年取り組んでおり、小学4年生を飼育活動担当学年と位置づけ、学校教育課程の内外において1年間責任をもって飼育活動を行うこととしている。学校休業日には子どもたちに加え、卒業生や保護者、地域住民も飼育活動に協力。

地域の獣医師による授業や、飼育活動における支援を受け、楽しみながら日常的に生命の大切さを学ぶとともに、豊かな心をはぐくむことができている。保護者も参加する「親子ふれあい教室」を開催することで、保護者へも飼育活動の意義や目的を共有し、協働意識を高めている。学校、子ども、保護者、地域の役割分担を明確化し、教員の働き方改革にもつながるうえ、連携・協働の絆が深まった。

[新型コロナウイルス感染症対応下での取り組み]
臨時休校時、おやじの会を中心とした地域の協力により、平時と同様に飼育活動を継続。

事例:神奈川県 厚木市
新型コロナウイルス感染症対策の清掃・消毒活動を地域が支援

学校運営協議会で教員の負担軽減という課題を共有、熟議した結果、毎日教員が行っていた清掃・消毒活動に、学校と地域が協働して取り組むようになった。学校運営協議会などを通じて「無理のない範囲で、教員と一緒に学校をきれいにする」という共通認識を広げ、参加者の感染症対策も徹底しながら活動を続けている。学校運営協議会の導入により、学校と地域住民の距離が近くなり、地域学校協働活動についても相談や連携がしやすくなっている。

事例:神奈川県 鎌倉市
放課後子供教室でのオンライン体験活動

[普段の取り組み]
放課後子供教室の理念として「出あう、つながる、ふるさとで自ら育つ」を掲げ、体験活動を展開してきた。

[新型コロナウイルス感染症対応下での取り組み]
普段から放課後子供教室で活動している地域団体やNPO、大学生らが講師となり、クイズやゲームを通した交流、工作や化学実験、英会話などの体験活動を、Zoomを使用したオンラインの双方向交流プログラムとして実施。体験活動を動画コンテンツとしてFacebookに投稿し、当日参加できなかった児童等への情報発信も行っている。新型コロナウイルス感染症対策のために放課後子供教室が休止となったことをきっかけに、地域コーディネーター数名によるオンラインプロジェクトチームを発足させ、連携する大学等の支援も受けながら実施が始まった。今後の展開として、対面型とオンラインのハイブリット化や、遠隔での交流活動への展開、オンラインプログラムを録画しアーカイブ化することなどを検討。

事例:兵庫県 三田市
「本物に触れる」体験講座を自宅でできるようホームページで公開

[普段の取り組み]

大学・高等学校・博物館、企業や地域人材などと協働し、子どもたちに「本物に触れる」体験講座を開催してきた。

[新型コロナウイルス感染症対応下での取り組み]

講座やイベントを自粛する中、子どもの学ぶ機会、体験する機会を提供するため、市のホームページにて、プログラムの一部から自宅で体験できるツールを紹介している。ペーパークラフトやプログラミングツール、講師自作の動画や、博物館所蔵の映像など、幅広い分野の多彩なコンテンツを集約し、提供している。今後、高校との協働による、オンラインでの講座を検討している。

事例:岐阜県白川村 白川郷学園
学校と地域がともにつくる学習支援動画

教職員とコーディネーターが打合せを行い、「地域の担い手10分語り」と題した動画を作成。コーディネーターが地域人材を選出し、自宅等を訪問して撮影。作成した動画は、休校中だけでなく、学校再開後の朝の会や帰りの会での視聴も想定。視聴後には、インタビューや職場体験などにつなげることも想定。今後も、より多くの村民に子どもたちの学びに関わる機会となるよう、動画の教材収集を続ける。

今回紹介した事例では、前例がなく困難な状況において、学校と地域が協力しながら柔軟な対応をすることで、子どもたちの活動を継続・発展させています。一方で、コミュニティ・スクールや地域学校協働本部が本来の機能を果たせない状況にあった学校や地域もあったようです。

災害や感染症拡大等の非常事態は地域社会を疲弊させ、平常時の矛盾が顕在化することで、住民の対立や家庭の孤立を深めてしまう場合があります。このような場合には、学校の内部だけでは子どもたちに及ぶ影響に対応することはできません。

普段から学校運営に地域住民等が関わり、学校や地域の課題を共有していることが、非常時における学校の決断や、活動継続のための支援体制構築のスムーズな進行につながります。また、「地域の子どもたちの成長や学びを支える」「安心・安全な地域を取り戻す」といった共通の目的を学校と地域が再確認し、学校の運営、地域活動の見直しやアップデートにつながるケースもあることがうかがえます。

第1回、第2回でご紹介したように、コミュニティ・スクールは、学校運営協議会を設置し、「地域とともにある学校」を目指して保護者や地域住民が学校運営に参加する仕組みです。地域学校協働活動は、「学校を核とした地域づくり」を目指し、学校と地域が相互にパートナーとして連携・協働する活動です。学校と地域の関係は、地域による学校への支援から、学校と地域の連携・協働(地域学校協働本部)へと変わり、学校が地域を活性化するという役割も再認識されるようになっています。学校、地域、家庭、そして子どもたち、それぞれが抱える課題や困難に対し、どこかで一方的に引き受けるのではなく、学校も含めた地域全体で、目標や課題を共有し、協議し、解決していくために、コミュニティ・スクールと地域学校協働活動は一体的に推進することが期待されています。

では、これらの仕組みを活かし、学校と地域の連携・協働を発展させるうえで検討すべき課題について考えてみましょう。

1つ目は、学校と地域の課題を解決するために、「学校教育所管課」「社会教育所管課」といった部局の垣根をこえて、教育委員会の行政担当者が支援を行うことです。学校の人手不足を地域住民の支援によって補うという側面が注目されがちですが、取り組みによる地域住民へのメリット、地域の活性化についても整理し、学校と地域双方が納得する形で取り組みを進めることが重要です。さらに、首長をはじめ行政全体で地域活性化に資する施策としての意義を認めることが、継続的な支援や地域住民の理解を得る上で必要となります。

2つ目は、地域学校協働活動推進員等のコーディネーターやコミュニティ・スクールの運営に係る人材の確保です。関係各所との調整や、企画運営を担うためには、幅広い知識や技能が求められます。研修や交流の場を増やすとともに、活動形態に応じた報酬の支払いの検討も当然のことながら必要です。あらゆる調整を教職員が担い、地域連携のために新たに多忙化を招いてしまっては、取り組みを継続することが不可能になります。持続可能な活動のための財政支援の必要性が、「コミュニティ・スクールの在り方等に関する検討会議」の「中間まとめ」でも述べられています。

3つ目は、多様なメンバーを巻き込み、社会総掛かりの教育と地域活性化を実現するための活動のアップデートです。まずは取り組みの周知方法です。学校運営協議会でどのようなことが検討されているか、地域とともにどのような活動が行われているか、積極的に地域住民に知らせていくことが重要です。学校ホームページの片隅に議事録が載っているだけでは、保護者ですら気付かない可能性があります。次に活動の時間やスタイルです。学校運営協議会について、管理職以外の教職員や幅広い世代・性別・職業の保護者、地域住民が参加できるような日時や方法が検討されてきたか、現状の委員構成で課題を検討する際に多様な視点や知見を活かした解決策の提示につながっているか、検討が必要です。第3回で紹介した新型コロナウイルス感染症対応下の事例では、ICTを活用した取り組みがありました。周知や活動スタイルにICTを活用することで、普段の取り組みにこれまで以上に多様なメンバーを巻き込むことができるのではないでしょうか。

これまで3回にわたってご紹介した学校と地域の連携・協働ですが、これらの取り組みは時代や環境の変化に応じて今まさに過渡期にあると言えます。子どもたちが地域に温かく見守られてのびのびと成長し、子どもとの関わりが地域の大人たちを元気にし、成長した子どもたちが地域の活動を担い活性化していく。そのような社会を維持してくために、学校と地域の関係性について皆で考えるべき時なのではないでしょうか。

 

構成・文・写真:内田洋行教育総合研究所 主任研究員 井上 暁代、足立 智子

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